【04】



このシェアハウスは親方様?が管理しているシェアハウスで、夢追い人を応援するために建てたとか。なので地下に完全防音のスタジオがあったり、アトリエやちょっとしたジムまである。個別の部屋は全部で8室あって、今は試験的に親方様の顔見知りの人たちの6人で暮らしていて、みんなそれぞれシェアハウスに来る前からそれなりの知り合いらしい。そんなところに突然蜜璃ちゃんの友達ってだけの私が飛び込んで来てしまって、住人の方々が嫌な思いをしないか不安だった。
住人の皆さんが帰ってくるまで時間があったからその間に蜜璃ちゃんに服を借りて着替えた。その後は突然式場から姿を消したことで迷惑をかけた両親や友達に連絡をした。両親にだけは今回のことを全て包み隠さず説明しこうなったことを理解してくれたし、彼氏…と言うかもう元彼かな。彼から居場所が知られていないシェアハウスに住むことを賛成してくれた。結婚する前に相手が危険な男とわかってよかった気付かずに辛い目に遭わすところだった守れなくてごめんなさい、と電話越しに泣くお母さんにつられて泣いてしまった。結婚を喜んでくれていた両親を裏切ってしまったと思っていたので、その言葉にものすごく救われた。


「#nane#ちゃん!みんな帰ってきてリビングに揃ってるわ!行けるかしら?」

「うん大丈夫。」


部屋に呼びに来てくれた蜜璃ちゃんに続いてリビングへ行くと、日中に会った銀髪のイケメン宇髄さんと豊富なタイプのイケメン達が揃ってソファに座っていた。な、なんでこんなにイケメンが揃っているの…!?思わず部屋に入るのを躊躇してしまい足を止めたら、蜜璃ちゃんにどうしたの?と聞かれ慌てて部屋に入る。


「この子が私のお友達の名前ちゃんです!」

「はじめまして、このシェアハウスでお世話になることになりました苗字名前です。仲良しの皆さんの中にいきなり入り込んでしまってごめんなさい!!」

「そんな堅苦しくなるなよ!頭上げろって!」


頭を深々と下げていたら宇髄さんがそう声を掛けてくれた。言われた通りに顔をあげたら彼はニカッと笑ってくれて緊張が少しだけ解ける。まぁ座れよと言われソファに座り深呼吸をひとつする。


「それで、このシェアハウスにお世話になることになった経緯なんですけど…」


これを話すのは気が重くて思わず言葉を止めてしまう。そんな私を心配して隣に座っていた蜜璃ちゃんが肩にそっと手を添えて来る。そんな彼女にありがとうと小さく言い笑顔を向ければ話す決意をし再び言葉を紡ぐ。


「3年付き合って1年以上同棲していた彼氏と今日結婚する予定でした。式場に着いて控え室で準備しているところに彼の奥さんが現れたんです。黒いマントと変なお面を付けた人も何人か。既婚者だったことも驚いたんですけど、そしたらその奥さんが私にこう言ったんです。「第二夫人のあなたに会えて嬉しい。妻が増えると彼は神に近付けるの、彼と一緒に世の中の悪魔を消滅させましょう私たちは神なのです!」って叫び始めて…」

「うわ、宗教かなんかだったのか?」

「宗教…と言うよりカルトに近かったです。その後奥さんが「血の契りを交わしましょう!」って小さいナイフと契約書みたいなのを取り出して、あーこれはやっばいって思ってトイレに行くふりをして蜜璃ちゃんに連絡して助けてもらったんです…」

「それでウェディングドレス姿でここにいたってわけかぁ。」

「そうなんです、ごめんなさい驚かせましたよね…」

「派手な初対面だったなぁ!」


銀髪イケメンにそう言われ恥ずかしくなる。いきなりあんな姿の女がいたらびっくりするよね…。


「彼があんなカルト教団に入っていたなんて知らなくて、けど今思えば控え室に現れたマントとお面の人たちと同じ物を彼のクローゼットで見かけたことがあって。そのときは前にハロウィンの仮装で使ったやつだって言われて納得してたんだけどまさかの結末でした。彼と住んでいた家は怖くて帰れないし、結婚したら家庭に入る予定で会社も辞めてしまって仕事もなくて…。」


自分で話していて悲しくて悔しくなる。俯いて爪先を見ていたら涙が溢れそうになったので顔を上げる。向かいに座っている彼らを見るとみんな真剣な顔で私の話を聞いてくれていた。好奇の目で見るわけでも哀れみの目で見るわけでもない。その表情を見て騙されるなんてバカじゃないかと思われると思っていた不安が少しずつ消えていった。


「こんな情けない事情ですがハウスメイトの仕事もしっかりさせて頂きますのでどうぞよろしくお願いします!」

[ 4/16 ]

[*prev] [StoryTop] [next#]




「#学園」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -