【踊らされている中でも君に口づけを】


「もう〜宇髄先生ったら何言ってるんですか!」

「名前先生が言ったんだろー!」

「違いますってー!」


夕方もとうに過ぎ人がまばらになってきた職員室。残っている人の中に俺の彼女名前も居る。学園で働く同僚で職場恋愛は色々ややこしくなるから周りには秘密にして密かに付き合っている。そんなアイツのはしゃいでる声が聞こえるなと思い顔を書類から上げれば隣の机の宇髄のやつと随分楽しそうに話してやがる。人懐っこく誰とでも楽しく接することができる名前。そんなところにも惚れたんだが、今目の前で見ている光景は気分が良いもんではない。それどころか胸糞わりィ…。


「じゃあ次の飲み会でやろうぜ!」

「いいですねそれ!」


俺がつまらなそうに2人を見続けていると宇髄がチラッとこちらを見てニヤリと笑う。その瞬間俺は額にビキッと筋を立てる。そうするとさらにニヤニヤと笑う宇髄。さてはアイツは気付いてんだな俺と名前が付き合ってんのに。わかっててやってんだなこれは挑発だ。ったくタチの悪い奴だ。


「名前先生ちょいちょい。」

「なんですか?」


宇髄に手招きされ椅子のキャスターを転がし近付く名前の肩に腕を回し顔を近づけ耳元で何かを言う宇髄。思わず2人を引き離すために大声で叫びながら立ち上がりそうになるも他の職員もまだちらほら残っている。ここで騒ぎを起こすわけにはいかない、落ち着けェ、落ち着け俺。顔中に怒りで筋を立てながらそう言い聞かせたところなのに、宇髄から言葉を受けた名前は顔を赤くしたらと思ったら随分と可愛らしく微笑んだ。その瞬間俺はガタンと大きな音を立てて椅子から立ち上がる。ここにいる全員からの視線を感じてその中にはもちろん名前もいる。目を丸くさせて驚いた顔で俺を見ている。俺はそんなアイツから目を逸らし黙ったまま職員室を荒々しく出て行く。早歩きで廊下を進んでいると後ろからパタパタと小走りで人が近づいて来る音がする。振り返らなくてもそれが誰かはわかる。


「不死川先生!」


呼びかけながら俺の隣に追いつくも俺は名前と目を合わせないように気付かないフリをするように前だけを向いて歩き続ける。何度か俺のことを不死川先生と呼ぶも俺が反応しなくて戸惑っている空気を感じる。


「実弥さん!」


階段を登り踊り場のところで名前が普段2人でいるときに呼ぶように俺の名前を呼んで俺は足を止める。チラッと横目でコイツを見てみれば眉を下げ困った顔でこちらを見つめていた。あーったく、そんな顔も可愛いんだなお前はァ。


「何か怒ってるの?どうしたの?私何かした…?」

「何かだァ…?」


俺が何故こんな苛立っているか気付いてないコイツに更に苛立ちを増した俺は名前の両肩を掴み壁際へ押し付ける。少しだけ痛そうな表情をした名前に顔を近付ければ相変わらず戸惑っている瞳と目線が合う。


「宇髄先生と随分と仲良しなんだなァ苗字先生はよォ。職場でアイツにヘラヘラと笑い掛けやがって、お前が誰のモンか忘れてないかァ?」

「っ…そんなことなっ……!?」


名前が何かを言う前に荒々しく噛み付くように唇を重ねる。油断していた名前の唇の隙間から舌を入れれば逃げるコイツの舌を音を立てて激しく追い絡める。そのうち俺のベストを両手でギュッと掴んで息を上げ始める。


「はぁっ…んっ、さみっねさっ…」

「職場で無理やりキスされて喜んでるのかよォ苗字先生。宇髄にもこうされたいのか?」

「え…宇髄先生…?なんでっ…」

「とぼけんなよ、アイツに近付いて顔赤くさせて笑ってたくせによォ。」

「あ、待って、実弥さっ…」


離した唇を再び重ね片手を名前のヒップラインを上から下に撫でれば肩をビクつかせていて反応している事を嬉しく思う。そのままスカートを捲り上げてやろうと裾の方まで手を伸ばせ俺の腕を掴んで止めてくる名前。


「ちょっともうダメ!ストップ!話を聞いてよ!」


普段温厚な彼女からはあまり聞けない大きな声で止められ、俺は動きを止めてジッと目の前で名前を見る。


「実は宇髄先生には私達が付き合ってるのバレてるの。前に私と実弥さんがデートしてるのを見かけたんだって…。それで次の職員の飲み会のとき実弥さん誕生日が近いから何かしようって企画してて、更に気を利かせて宇髄先生が途中で私と実弥さんで早めに抜けられるようにしてくれるから、その、その日は早く帰ってイチャイチャすればいいって言われて私思わずその事想像しちゃって照れちゃって笑っちゃったの!!実弥さんのこと考えたら幸せになっちゃったんだもの!!」


ここまで言い切ると顔を赤くさせて口をむっと結んで俺を少し睨むように見てくる名前。あークソ、これは俺がこうなる事を見込んで宇髄に仕掛けられたやつだな。完全にハメられたなクソォ…。


「……悪ィ。お前が俺以外の前であんな風に笑うの見て嫉妬した。」

「怒ったのかと、嫌われるのかと思った。」

「嫌いになるわけないだろォ…」


ギュッと優しく名前を抱きしめてやれば俺の背中に腕を回してくれる。


「背中痛くなかったかァ…?」

「うん大丈夫。」

「職場でこんなことして、大人気なかったわ…お前のことになると冷静になれねェんだよ。」

「ふふ嬉しい。けど安心してね。私は実弥さんだけが好きなんだよ。」

「あんまり挑発すんなよォ…」


嫉妬で荒れていた気持ちはおさまってきたが今度はコイツが可愛くてしかたなくて再び唇を重ねようと顔を近付ける。


「あーー不死川先生と苗字先生が学校でえっちなことしてるいけないんだー!」

「宇髄先生!?」

「宇髄ィイ!!テメエエエ!!!」


下の踊り場からニヤついた顔した宇髄がまたもや挑発する様に俺を見ていた。コイツを懲らしめてやろうと俺は地面を蹴って素早く階段を飛び降りれば宇髄も素早く走り出す。後ろの方で名前の小さく笑う声が聞こえた気がした。とりあえず今日はアイツを連れ帰ってもう少しだけお仕置きしてやらねェとなァ。その前に宇髄を先にとっちめなきゃな。俺はヤツを追いかける足を更に早く動かした。



〔5000hitリクエスト→不死川実弥/現パロ/嫉妬/甘〕



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