【終電を逃してあなたを捕まえる】


息を切らしながら駅まで小走りする。久しぶりに会った友達と話が弾んでしまい終電間近の時間になっていた。慌てて友達と別れ駅に向かう。よしっなんとか間に合いそうと思ったとき突然目の前に2人の男が現れ道を塞ぐ。


「おねーさんどうして走ってるの?」

「そんな急いでどこ行くのー?」

「ちょっと終電に間に合わなくなっちゃうから退いて下さい!」


脇に逸れてその場を離れようとしたとき1人の男が私の腕を掴む。


「はっ離して下さい!」

「終電なくなってもいいじゃん〜俺たちと朝まで飲もうよ〜」


腕をグイッと引かれ男との距離が近付く。ものすごくお酒臭い…。強く掴まれた腕が痛くて怖くなって来る。周りには人がまばらに歩いていたが見て見ぬ振りをされた。


「腕痛いっ、いやっ離して…!」

「俺たちと一緒に来てよ〜!」

「嫌って言ってんだろォがァ。」

「!?」


酔っ払いの男と私が低くてドスの効いた声がした方を向くと、銀髪ではちゃめちゃに強面の人が立っていた。何故か腕は傷だらけ。その人を見た途端酔っ払いは腕を離しピューンっと効果音でも付きそうなぐらい早く走って逃げて行ってしまう。


「おいアンタ、だいじょうっ」

「ひいいい反社の人怖いいい!」

「なっ!?ちげェよ!!」


怖すぎて持っていた鞄を頭に乗せてしゃがみ込む。あれこれって怖い人から身を守る姿勢じゃなくて地震から身を守る姿勢だっけ?とにかく怖くて目をギュッと瞑る。なんなのこの人怖い怖い!!酔っ払いのお兄さん達の方がよかったよ戻ってきて!!とわけわからない思考にまで達してしまう程怖い!


「オイオイ落ち着けェ、俺はそんな人間じゃねェよ、大丈夫だったか?怪我は?」


反社の人は私と目線を合わせるためにしゃがみ込んで話しかけて来る。頭の上にある鞄の影からチラッと反社の人を見ると先程の人を殺しそうな顔とは違って随分と穏やかな顔をしていた。


「怪我はないです、ごめんなさいせっかく助けて下さったのに失礼なことを叫んでしまって…」

「本当だよなァ、反社の人って。」


ククッと小さく笑いながら手を差し出して来る反社じゃなかった人の手を取り地面から起き上がる。あっ!と終電のことを思い出しスマホに表示されている時間を見ると終電はちょうど出発してしまった時刻であった。


「あぁ〜、終電行っちゃったぁ…」

「そら残念だったなァ、タクシーか?念のため乗り場まで一緒に行くぜ?」


えーやだもう反社じゃなかった人めちゃくちゃ親切じゃん!!それに顔も結構イケメンだった!!失礼だった自分の態度を都合よく忘れ突然ドキドキし出した。
タクシー乗り場まではお互い無言で歩く。残念ながらあっという間に着いてしまって私と強面イケメンのラッキータイムは終わりに近付く。


「あの、助けてくださってありがとうございました。」

「気にするなァ。気を付けて帰れよォ」


本当は連絡先とかも聞いちゃったりしたいけど、生憎私にはそんな勇気はなかった。タクシーに乗り込む前にせめて名前ぐらいは…!!と思い頑張って聞いてみることにした。


「あのよかったらお名前を教えて頂けませんか!」

「名前?不死川実弥だァ。」

「し、な…?」

「不滅の不に死ぬの死に普通の川…さねみは」

「ややややっぱり反社の人だああ!!」

「だからちげェって!!」


私が大声で言ったからか不死川さんは慌てて私の口を片手で塞ぐ。ごめんなさいごめんなさいと謝れば手を離される。


「アンタの名前はァ」

「私は名前です…」

「おぉ、名前か。じゃあ名前さんよォ、家に着いたら連絡一本しろよォ。」


言いながら私が手に持っていたスマホを取り番号を打ち込む不死川さん。ほらっと返されたスマホを受け取りながら恐る恐る尋ねる。


「事務所の番号ですか…?」

「お前ェ…。」


さっさと乗れと背中を押されタクシーに押し込まれる。運転手にどちらまで?と聞かれ住所を告げる。車が発進する前に窓から不死化さんを見ると片手を軽く上げて見送ってくれた。別れを惜しむように私も小さく手を振る。


この出会いに舞い上がった私は我慢できずにタクシーの中からさっき不死川さんが入力してくれた番号に電話をかけた。「まだ着いてねェだろうがァ」と怒られてしまったけだ少しだけ不死川さんは笑ってた気がする。



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