【04. Emborracharse】



ードクンッドクンッ


心臓がうるさくて痛い。冷や汗が出て体が熱い。待ち合わせのお店へ来て既にみんながいる個室のドアを挨拶をしながら開けた。一人の男と目が合った。その瞬間心臓が鷲掴みされたみたいに痛くなる。呼吸が上手くできない。燃える夕日みたいな色をした瞳。その瞳から目が逸らせない。痛い痛い心臓が痛い。


「ちょっと名前どうしたのよ!?」


立ち尽くしていたら梅ちゃんが席を立ちガバッと抱きついてくる。


「えっあっごめんごめん!駅から小走りで来たから息切れしちゃって……歳かな?ははっ!改めてみんなよろしくね〜!」


梅ちゃんのおかげで正気を取り戻してヘラヘラと笑いながら空いている席へ座る。チラッと先程の男を見てみる。向こうも私を見てギョッとしてた気がする。心臓はもう痛くなかった。息も普通にできる…なんだったんだろうあれ…。


「俺は煉獄杏寿郎!!中高一貫校で歴史の教師をしている!!!好きな食べ物はさつまいもだ!!焼いていても蒸していても煮ていても裏ごしされていても好きだ!!よろしく!!!」

「声でっっっか!自己紹介独特っ!!」


煉獄さんと言うらしい男に思わずツッコミを入れると他のみんながどっと笑い出した。みんなは名前を言うぐらいの軽い自己紹介だったのに個性を出してきた煉獄さん。さっきは目が合った瞬間固まっちゃってよくわからなかったけど、派手な髪色に凛々しい眉毛に大きな瞳、鍛えているであろうガッチリした身体。かなりの男前だった。あれ、結構いいんじゃない煉獄さん。


「名前さん何を飲む?一緒に頼もう!」

「えー何にしよう珍しいお酒たくさんあるなぁ、一杯目だけどカリモッチョにしようかなぁ…」

「カリモッチョとはなんだ!」

「スペイン産の赤ワインをコーラで割ったカクテルだって!」

「よもやな組み合わせだな!」

「よもや???」


オーダーしたドリンクが届きみんなで乾杯する。遅れてきたこともあって既に男女それぞれがいい感じになりつつあった。話してわかったけど私と煉獄さんは人数合わせで呼ばれた者同士だった。みんながうまくいくといいねーなんて言いながらいつの間にか隣同士に座り壁の花に徹することにした。


「名前さんこれを食べるといい!空きっ腹に飲むと酔いが早く回ってしまうぞ!」


取り分け皿にいろんな種類の食べ物を少しずつ乗せた物を笑顔で差し出してくる煉獄さん。ありがとうとお礼を言いお皿を受け取ったとき、指先同士が触れ合う。ドクドクとまた心臓が強く脈打った気がした。嫌な感じだ。誤魔化すようにアルコールを流し込む。


「カリモッチョはどうだ?」

「意外とおいしいよ!飲んでみる?」


持っているグラスを差し出せばそれを受け取る煉獄さん。私のリップの跡が付いてるところに口を付けている。間接キスなんてなんてことないのに心臓はさっきより強く音を立てている。何故か頭の中で警報が鳴っている気がする。あれ、やっぱり煉獄さん良くないのかも…?


「うまいな!」

「でしょ!」


返されたグラスを指先が触れ合わないように受け取る。この動悸は何なんだろう。病気なの私??だけど紛らわす様にペースを上げて呑んでいるとそのうちそんなことも気にならなくなった。煉獄さんともなんてことなく話せていた。


私が遅れて来たのもあってあっという間に終電が近い時間になった。遅れて来たくせにみんなよりお酒を飲んだ気がする。食後酒のシェリーを惜しげもなくグイグイ呑んだ辺りから記憶が曖昧になっていた。




〔Emborracharse/酔っ払い〕


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