【42. Would you rescue me?】





「はぁ…」

「どうかしたか?」

「雨、うんざりだなって」

「確かに、もう何日もずっと雨だな」


音を立てて窓を叩きつける雨が降り続いている。梅雨入りしてから本当にずっと毎日雨が降っていて私はげんなりしていた。


「雨なんて大嫌い」

「…どうして名前は雨が嫌いなんだ?」

「だって夏はじめじめして最悪だし、冬は濡れたら寒くなるし…それに今日みたいにまだお昼なのにもう夜になるのかなってぐらい空が暗いのが嫌い。夜は必ず来るんだから昼間ぐらいは明るい方がいい」


隣に座る杏寿郎に抱きつき彼の胸元にぐいぐいと顔を押しつけ天気の悪さにモヤモヤした気持ちを少しでも晴らそうとする。そんな私を宥める様に頭に手を置きポンポンしてくれる杏寿郎。


「確かに空が暗いな」


随分と落ち着いた声で言った彼の顔を胸元から見上げれば、真っ直ぐと目を窓に向けていた。真面目とも深刻とも捉えづらい、けどなんとなく普通ではない表情。


「だがこうして名前とふたりで家でのんびり過ごすのも俺は好きだがな」


私が声も掛けられずただその顔を見つめていれば、表情をにこやかに切り替えこちらを見つめ返してくる杏寿郎。そうだねとこちらも機嫌良く返事をすればちゅっとおでこにキスされる。杏寿郎の髪が頬を掠めて擽ったくて少し笑ってしまう。


「雨でも杏寿郎の家には乾燥機があっていいな。洗濯物が外に干せないから部屋干しだと臭いとかこの時期はかなり気使うし大変だよ。エアコン付けたり除湿機能付いたサーキュレーターも買ったし…電気代かかったり家電買ったりするなら私も杏寿郎みたく乾燥機買えばよかった」

「あれは就職が決まって一人暮らしを始めるときの両親からの就職祝いだ!」


そうなんだねと返事しながら私は乾燥機への考えを巡らせる。天気や時間帯に左右されない上に干す手間も不要で清潔に洗濯物が乾く、それってかなり生活が楽になるのでは?テーブルに置いてあった携帯を手に取り乾燥機を調べ始めると杏寿郎がフッと笑いを零す。


「そんなに欲しくなったのか?」

「ものすごく惹かれてる…値段によっては貯金で買うか夏のボーナスまで待つか…けど梅雨時期の今だから欲しい!いっそのこと乾燥機付き洗濯機に買い換えちゃうか…けど光熱費とかもどのぐらいかかるか調べてみないと…」


携帯の画面を指で忙しなく動かしていると杏寿郎の手が重なりそれをやめさせる。なんだろうと思い彼を見ればキラッキラの笑顔でこちらを見つめてくる。


「だったら一緒に暮らさないか!乾燥機も使えるし光熱費も浮くぞ!何より名前と一緒にいる時間が増えたら俺は嬉しい!」


私は手に持っていた携帯をゴトンッと床に落とした。


〔Would you rescue me?/私を助けてくれない?〕



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