【39. Ahhh…Doesn't matter】



楽しかったGWはあっという間に終わってしまった。バーベキューに行ったり杏寿郎と近場でお出かけしたりお家でまったりしたり、友達とも会ったりして充実した連休を過ごせた。また平日は働く日々が始まって久しぶりの仕事にいつもより疲労を感じながら家路につく。自宅の最寄駅で食材の買い物をしてちょうど家に着いた頃に携帯がバッグの中で震えているのを感じる。荷物をテーブルの上に置いてから携帯を取り出せば画面は天元からの着信をお知らせしていた。


『もしもし?』

『お疲れー、今大丈夫か?』

『大丈夫だよ、どうしたの?』

『実は来月さ…』


天元とは以前からの顔見知りではあったけど、バーベキューのときに作ったグループトークで初めて連絡先を知った。そんな天元から電話が来て少しだけ驚いた。話を聞けば最近色んなイベントで引っ張りだこの人気DJの主催イベントがあり、天元が私と梅ちゃんを招待枠に入れてくれるお誘いであった。チケットは争奪戦になるのが目に見えているので嬉しいお誘いだった。


『話変わるけど明日煉獄と会うんだろ?』

『え、うん。何で知ってるの?』


杏寿郎とは週末の休みに会うことがほとんどだったので、明日の平日にお誘いされるのは珍しかった。でも何でそれを天元が知っているんだろう?


『何でって明日煉獄の誕生日だろう?』

『………え?なに?』

『何って明日は煉獄の誕生日だから何かうまいもんとか食って名前ちゃんのことだから気の利いたプレゼント渡して、その後はどうせ…』

『明日杏寿郎誕生日なの!?!?』

『……まさか知らなかったのか?』


動揺を隠せないで大きな声で聞き返してしまった。明日が杏寿郎の誕生日…?私何にも聞いてない…そもそも誕生日がいつだなんてお互い話もしたことなかった。


『ごめんもう切るね…』

『お、おう、頑張れよ…』


通話終了ボタンを押して携帯の画面を見つめたままリビングで立ち尽くす。どどどうしようまったくもってノープランだ。けど大丈夫、落ち着いて私。今からでも明日の夜にどこか良い感じのレストランの予約を入れて、仕事はなにがなんでも定時で帰ってプレゼントを買おう。そうだ、まず杏寿郎にさりげなく明日は何をしたいかメッセージを送って聞いてみよう。


『明日は名前の家で過ごしたい!迷惑じゃなければ名前の手料理を食べたい!』


再びリビングで携帯の画面を見つめたまま立ち尽くす私。だから大丈夫だって落ち着いて私。定時で上がった後にプレゼントを買ってそれから食材を買って家に帰ってきて特別な料理を作るだけじゃない。冷静に考えたら大丈……冷静に考えたら杏寿郎の好きなものって何?さつまいも以外に知らないんだけどプレゼント何にしたら…?お芋…?しかも付き合いたての彼氏にあげるプレゼントってお値段どのぐらいの物がいいの?ブランド物あげたら引かれる?だからって安い物で済ませるべきじゃないよね?家で作れる特別な料理って何?しかも杏寿郎がお腹いっぱいになるまでの量。それに買い物して帰ったらきっとそれなりの時間になるしせっかく来てくれている誕生日の杏寿郎を待たせてしまうことになる。理想的なのはプレゼントもバッチリ用意して料理も全て作り終わった状態で尚且つ自分もメイクを直したりおしゃれした状態で家に来てもらうのがいい。どう考えても時間が足らない。私は無事にパニックを起こした。



ーーーーーーーーーーーーーーー



昨日の夜は今日の杏寿郎の誕生日のプランを考えるも自分の中で完璧のものを思いつかなくてあまり寝れなかった。お陰様でメイクのノリも少し悪い。仕事中も今までにないぐらいずっと険しい顔で過ごしてしまっていたようで、あの上司の酒泉さんにまで疲れているようだから今日は定時で帰りなさいと言われるぐらいだった。
お陰様で定時きっかりで退社させてもらい私は早歩きでオフィス街を進む。プレゼントを買えるお店もちょっと贅沢な食材を売っているお店も都心にある会社からは近場にある。ありがとう東京なんて便利な街なの。杏寿郎には申し訳ないけど仕事が少し長引きそうだからとメッセージを送り家に来る時間を1時間遅らせてもらった。買い物はスムーズに済ませることができて後は家に帰ってから頑張るだけ!大丈夫きっとうまくいく!がんばろう私!そう意気込んで電車に乗って早く帰ろうと改札を通ろうとしたところを突然目の前に出てきた駅員さんに阻まれる。


「緊急の車両点検のため只今運行を中止しております!運転再開時間は未定です!」


私は手に持っていた買い物袋を地面に落としてしまった。



〔Ahhh…Doesn't matter/えーと…問題ない〕


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