【31. Keep your eyes closed】



「へぇ〜歌舞伎とか好きなんだ!」

「あぁ!歌舞伎だけではなく舞台を観るのも好きだ。それから相撲観戦も好きだ!」

「渋っ!私はミュージカルとかの方が好きだなぁ。前にね…」


ソファに座っている俺の膝に頭を乗せ寝っ転がっている名前は色んなことを教えてくれた。お昼に食べたパスタは語学留学先で知り合ったイタリア人に教わったレシピだとか、向こうで観たミュージカルが忘れられないとか。俺の知らない名前のことを知れるのはとても嬉しかった。又、俺のことを聞いてくれることも嬉しかった。


「そんなにさつまいもが好きなら今度さつまいも料理作るね!スイーツとかでもいいなぁ、何がいいかな杏寿郎?ねぇ聞いている?」


楽しそうに話す彼女が可愛らしくてついつい頬を緩ませ見つめてしまっていた。頭を起こし隣に座り直せば両手でむにゅっと俺の両頬を潰してくる名前。


「なにニヤついてるの?」

「にゃつぅいていたは?」

「え?なんて?」

「ハハッニヤついていたか?」

「ニヤニヤしながらずっと見てくるから変態かと思った!」

「変態は嫌いか?」

「うーん……好き。」


彼女の両手を手に取り顔を近づけながら聞けばそう答えるのでそのまま唇を重ねる。少ししてから離し角度を変えてまた重ねまた離すを繰り返す。目を閉じずにそうしていたら目を瞑っていた彼女の瞳がパチっと開く。


「ずっと目開けてたの?ほんとに変態?」

「なぜキスをするとき人は目を閉じるのだろうか。」

「んー… …近すぎると見えなくていいことまで見えてくるから?それか目を閉じることで見えていなかった見えてくるものを感じるため?」

「深いな!」

「そんなのはどうでもいいから、目を閉じて私だけに集中して。」


そう言って彼女から唇を重ねられる。音を立ててゆっくりと重なりゆっくりと離れる少し官能的な口付けに身体の奥が疼いた。しかし理性を働かせるため俺は顔を離し彼女の細い首筋に顔を埋める。


「昨日から色々と我慢しているんだ…あまり挑発しないでくれ…」

「私だって我慢してるんだから、ちょっとぐらいいいじゃん。」


首筋から顔を離せば唇を尖らせ少し眉に眉間を寄せいじける名前が見え可愛くて参ってしまう。彼女の柔らかな髪を撫でながら見つめれば今度は困ったように微笑んだ。色んな感情で色んな表情で己を見せてくれる彼女から目を離せない。できれば離れることなくずっと見ていたいものだ。そうしたら少しは彼女に飽きて離れる時間を作ろうと思うものか。いや、きっとそうはならないな。自分はいい歳なのにこんな風に恋愛にのめり込むのはどうかと頭の隅っこでは考えてはみるが、彼女を目の前にすればそんな考えは何処かへと吹っ飛んでしまう。


「君とはつい最近知り合ったとは思えない。昔から夢中な気がするよ。」

「なにそれ変なの。」


彼女はクスクスと笑いながら俺の指に自分の指を絡めてくれば肩にこてんっと頭を乗せてきて目を閉じた。



〔Keep your eyes closed/目を閉じたまま〕


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