【29.Sunny then cloudy】



薄らと目を開ければ目の前に見える窓のカーテンの隙間から外の陽の光が差し込んでいた。外は明るくなってから結構時間が経ってそうだとまだ少し寝ぼけてる頭で思った。そして背中に感じる自分のもの以外の温度。いつもの枕とは違う少し硬く逞しい腕枕の寝心地は悪くなかった。自分の腹部に回っているもう一本の彼の腕は少し重く感じたけどその重さが何だか安心できた。
男性と関係を持つことは最近までも少しはあった。少しよ少し。けどお泊まりはせずに事が済んだらササっと帰っていた。それ以上の関係や時間は私には全く必要なかったから。だから誰かと一緒に寝て起きるなんて何年ぶりだろう。しかもセックスなしで。こんなに心地の良いものだったっけ?背を向けていた彼の方へ身体を反転させ彼の顔を見つめる。目尻の長い睫毛を指でそっとなぞると杏寿郎が少しだけ身動ぐ。そのまま首を伸ばして瞼にキスを落として様子を見るけど起きることも動くこともない。そのまま首筋、鎖骨へと音を立ててキスをするけど起きる様子はないので布団の中に潜り彼の着ているTシャツを捲り上げてところでバサッと布団を剥がされる。


「よもや、君は朝から何をしているんだ…」

「んーモーニングコール?誰かさんが狸寝入りなんてするから。」

「バレていたか…」


ハハっと小さく笑う杏寿郎。腕を引かれて上の方に引き上げられれば今度は彼から私へのキスがたくさん降ってくる。唇やほっぺに首筋。短く何回もしてくるから擽ったく感じて足をバタつかせてしまう。


「やだ擽ったい!もうだめストップ!」

「お返しをしているだけだ!逃げるな!」


ギュッと強く抱きしめられて最後に優しく唇を重ねられる。それもそれで心が擽ったく感じた。甘い雰囲気が流れ始めたところでぐうう〜と彼のお腹から大きな音が聞こえてきた。


「朝ごはん食べよっか。と言うよりお昼ご飯?」


起き上がりながらベッドサイドテーブルに置いてある携帯を手に取り時間を見る。朝方近くまで映画を観ていた私たちは寝るのも遅かったので起きたら朝と言うよりもう昼に近い時間だった。2人でキッチンへ向かい冷蔵庫や棚を一緒に覗く。


「酒酒酒酒酒ばかりだな!!」

「夢見たいな場所でしょ?…買い物行こっか?」


微妙に残っている食料だけでは料理も作れそうにないし、杏寿郎はたくさん食べるから明らかに食料が足りてない。顔を洗って顔にパウダーだけ軽く付けて着替える。杏寿郎も支度を終えて2人で外へ出る。


「何が食べたい?何か一緒に作ろうよ!」

「麺系がいいな!だが俺はあまり料理は得意ではない!教えてくれるか?」

「私めっちゃ美味しいアマトリチャーナ作れるよ!教えてあげる!」


自然と手を繋ぎ一緒に作る料理の話をしながら歩いてる。起きたときはたくさんキスをし合ってイチャイチャした。正にカップルっぽい。らしくないのはわかってるけど正直この状況に私は浮かれている。


「おいおい嘘だろマジかよ…」

「あれっ天元!」

「宇髄ではないか!」

「「ん??」」


声が聞こえて杏寿郎と2人で声の主に顔を向ければそこには天元が居た。私が名前を言ったと同時に杏寿郎も何か名前を呼んだ気がした。


「え、杏寿郎と天元もしかして知り合い?」

「まさか名前も宇髄と知り合いだったとは!」

「やだぁ偶然だねー!」

「そうだな!新しい共通点が見つかったな!」

「おいコラ俺を無視して派手にイチャつき始めんじゃねぇ!まさか名前ちゃんの気になってた男が煉獄だったとはな…しかもお前ら付き合ったのかよくそ!」

「そうなの私たち付き合うことになったの!話聞いてくれてありがと!ってかお家まさかの近所だったの?」

「なんだ宇髄が名前の相談に乗っていたのか!世話になったな!」

「なんなんだよお前ら!手繋いで見せつけやがって!次はなんだ2人でおいしいパスタでも作る予定か!?」

「ああ名前に作り方を教えてもらうんだ!」

「なんなんだよ…もうあっち行けよ!ったく!」

「じゃーねー天元!」

「またな宇髄!」


杏寿郎と去っていく天元に手を振るけど天元は振り返ることなく早歩きで去ってしまう。えらく不機嫌だったなぁ天元。そして杏寿郎がまさか彼と知り合いだったなんて奇遇だなぁ。
スーパーに着いて必要な材料を買い揃えて帰宅し、すぐにパスタを作る準備をする。杏寿郎は料理は得意じゃないと言っていたけど包丁捌きだけはプロ並みにすごくてびっくりした。だけど分量を計ったり食材を入れたりするのは面白いぐらい飛び散らすのでやらせない事にした。あとで掃除しなくちゃ…。ソースを煮込んでる間に簡単なサラダも用意する。


「ところで宇髄とはどこで知り合ったんだ?」

「あー……」


うーん質問されずに済んだと思っていたら今ここで聞かれたか…。別に隠そうと思っていたわけではないが杏寿郎の気分を悪くさせないかが心配だった。けど嘘をつく気はないので正直に答える事にした。


「毎週行ってたクラブで知り合ったの。」

「クラブ!何かの習い事か!」

「え?…あぁ違う違う…その…男女が出会うために夜な夜な繰り出すところ…お酒飲んで…踊って…いえーいって…」

「……………」


杏寿郎はもともと大きな目をかっピラいて瞬きもせずに笑顔でわたしを見ている。うん、なんとなく予想ついてたから言いたく無かったんだよなぁ…。グツグツと煮込み終わったソースの火を止めながら小さく溜息をついた。



〔Sunny then cloudy/晴れのち曇り〕


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