【24.Is timing everything?】



信号無視もスピード違反もしてないはずなのにとても早く杏寿郎の家に着いた気がする。車を停めて彼の家のマンションのエレベーターに乗り込み2人とも黙ってエレベーターのドアが早く開かないかと見つめていた。降りてから廊下でマンションの住人と出会してこんばんはーなんて白々しく笑顔で挨拶する。

杏寿郎の家の前に着き彼が鍵を開ければ先に入る様にと手で託される。先に入り背中でドアと鍵が閉まった音が聞こえて後ろを振り返れば杏寿郎が少し乱暴に唇を重ねてくる。2人して足元も見ずに乱暴に靴を脱ぎながら触感を確かめる様に角度を変えてキスを続ける。唇の隙間から杏寿郎の厚い舌が入ってきて自分の舌を絡め取られると思わず声が漏れる。


「っ…はぁ、きょっじゅろ…」

「名前っ…」


彼の首に両腕を回せば杏寿郎の大きな手が腰からヒップラインへ降りてくる。そのまま片足を絡ませれてみれば両腕をお尻の下に回されて軽々と正面から抱えられた。寝室に着けばベッドに雪崩れ込み私の上に覆い被さる杏寿郎。くちゅっと水音をさせ舌を絡ませながら彼の上着を乱暴に脱がせシャツのボタンに手をかける。彼が私のスカートを託し上げて太腿をゆっくりと撫で上げてきたので思わずゾクッとしてしまう。


「はぁっ……なにっ、どうしたの…?」


突然唇を離し動きを止める杏寿郎。何事かと見上げれば彼は無表情のまま固まっていた。


「持っていないんだ…」

「え…?なに?」


彼らしくない小さな声で何か言うので上手く聞き取れずに聞き返せば彼は覆いかぶさっていた身体を起こし片手でやらかしたとばかりに自身の額を抱えた。


「ゴムが無いんだ…」

「………普通持ってない?」

「いや久しくこんなこともなかったから家に置いてないんだ…」

「ぁー………」


まさかの展開に気まずい沈黙が流れる。すると突然杏寿郎が私の目の前で正座をしガバッと頭を下げる。


「準備が悪くて本当にすまない!!大事な場面でこんなことになってしまい男として不甲斐ない限りだ!!」

「いやっ大袈裟!律儀!育ちが良いんだね!気にしないでよ!」

「名前とは結婚を前提に付き合っていくが、先週の様に煩わせてしまう様な事は避けたい!」

「待ってそんな重い付き合いなの?聞いてないんですけど!?……ねぇ杏寿郎、そしたら私今日は帰ろうかな。お泊まりセットもないからメイクとかもきちんと落とせないし、明日仕事だから泊まったら朝早くにここ出て家に戻らなきゃだし…」

「……そうか」

「ねぇそんな顔しないで?私たちこれからは好きなときに会えるんだよ?次の週末に2人の時間たっぷり作ろ?」


彼の顔を上げさせちゅっと軽くキスすれば腕を引き寄せられて優しく抱きしめられる。胸元に顔を寄せれば彼の熱い体温と鼓動が伝わって来る。こんな風に自分のものじゃない人の体温や音をゆっくり感じたのはいつぶりだろう。ついさっき家に帰ると言ったのは自分なのに帰るのがほんの少しだけ寂しくなって来る。


「いえだめ、ムラムラしてきちゃうから離れて。」

「むうっ」


やっぱりこれ以上はまずいなって思って彼の胸を押し返した。



〔Is timing everything?/タイミングが全て?〕


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