【22. Let me kiss you】



「すごい…綺麗…」


控えめにライトアップされている大きな藤を見て彼女は小さく言った。花を見上げながらゆっくりと歩き太く立派な木の側まで来ればそっと幹に手を添える。


「何十年、何百年前からここにいるんだろう…」

「明治時代からあるそうだ。」

「まさかこんなところにこんな綺麗な藤の木があるなんて…」


頭上に広がる花を見上げながらゆっくりと回る彼女。今日着ている紫色のワンピースと藤の花があまりにもマッチしていて思わず笑みが溢れる。


「あの寺には住み込みの住職はいないが、この藤の手入れだけは今も念入りにされている。何年か前に一人でドライブしているときにたまたま見つけたんだ。その…怖がらせて悪かった。君を驚かせたくて…。誰にもこの場所のことを言ったことすらなかったが、今日ここに君を絶対連れてくると決めていたんだ。」

「連れて来てくれて嬉しい……ありがとう。」


俺と向き合い綺麗に笑う名前は美しくて目が離せなくなった。互いに心の内に感じていることを今はもう誤魔化したくなかった。隠したくなかったし隠す理由も今この瞬間はもうない。彼女の両手に自分の指を絡ませ顔を近づければ彼女も俺を見上げるようにして顔を近付けてくる。そのまま目を閉じて唇をそっと重ねた。


「君が好きだ名前。」



〔Let me kiss you/あなたにキスさせて〕


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