【19. Show me】



日曜日の高速は少しだけ混んでいた。だがそれも想定内なので目的地には時間通りに着きそうだ。名前は運転している俺にコーヒーやパンを渡してくれたりゴミを受け取ってくれたりした。気が効くなと言えばいい女なんで、とドヤ顔で言われた。彼女が好きそうな外国の曲が流れるチャンネルにラジオを合わせれば、楽しそうに鼻歌を歌っていた。
高速をやっと降りてから数十分。自然豊かな道を気持ちよく走り、道沿いに出てきた目的の建物の駐車場にゆっくり車を停める。


「着いたぞ!」

「運転お疲れさま!ここ…古民家カフェ?」

「あぁ、知り合いの店なんだ。」


車から降りた名前の手を握ると彼女も握り返してくれた。嫌がられるかと思ったので少しだけ驚いたが、そのまま歩いて店の中へ入る。


「いらっしゃいま…あら杏ちゃんじゃないの!久しぶりねぇ!」

「おばさん久しぶりだ!元気であったか!おじさんは居るのか!」

「そのデカい声は杏寿郎だな!おいおい隣のべっぴんさんは彼女か!?」

「あらあらあらぁ〜!」


顔馴染みの店のおじさんとおばさんに挨拶すれば手を繋いで隣に立つ名前を見て2人は声を荒げた。名前はこんにちは〜とにこやかに挨拶した。


「杏ちゃんが彼女連れてくるなんてはじめてじゃな〜い!奥のとっておきのお席案内するわね〜!」


この古民家カフェの奥にある席はとっておきだと前に教えてもらったことがある。家族のお祝い事で訪れたときに案内されたことがあったが、中庭が一番広く綺麗に見える窓の側の席だった。


「すごい綺麗なお庭、内装もレトロでオシャレ…」


周りを見回している名前の手を名残惜しく離し椅子を引けばありがとうと言いながら座る彼女。


「なぜ否定しなかった?」

「何を?」

「彼女だと言われて。」

「否定したらこの良い席に案内してもらえなかったかもしれないでしょ?」


悪戯っぽく微笑む名前。あぁなんだと残念に思いながら自分も席に着く。向かい合って彼女の顔を見れば窓から入ってくる柔らかな光を受けて柔らかく微笑んでいた。


「それにね嫌じゃなかったの。」


君のその笑顔をもっともっと見ていたい。君といっしょに過ごし君をもっと知りたい。焦る気持ちが止めたくても溢れ出す。君を俺にもっと見せてほしい。



〔Show me/魅せて〕


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