【18. Black coffee with you】



日曜日の朝。ベッドの上に服を並べ唇に指を添えてうーんと唸る。今日どこへ出掛けるのかを知らない私は服選びに苦戦している。TPOは大事だから失敗したくない。オシャレな場所なのにカジュアル過ぎたらどうしよう。カジュアルな場所に本気すぎる服を着て浮いたらどうしよう。そんなに悩むなら何処へ行くのか聞けばいいって?ふふふ私は杏寿郎の連絡先を知らないんだな!!!連絡先も知らない人とのデートでなぜこんなに悩まなくちゃいけないの…モヤモヤした気持ちのまま、ウェスト部分の切り替えがギャザーのパワショルのミディアム丈のワンピースを手に取る。落ち着いたラベンダー色でスリットが入っているそれを鏡の前で合わせる。これに杏寿郎が見つけてくれたパンプスを履こう。夜はまだ寒い日があるからジャケットも一応持っておこう。
時間ギリギリまであれやこれやと支度をし玄関のドアを開ければエントランスに杏寿郎の車が停まっているのが見える。車が見えただけなのに少しドキッとしてしまった自分を情けなく思いながら下へ降りる。


「ごめんねお待たせ!おはよう杏寿郎。」

「おはよう名前!10時丁度だ気にする……な…」

「え?なに?」


助手席に乗り込みながら挨拶すれば元気よく返してくれていた杏寿郎が私を見て固まる。あ、服装間違った?けど杏寿郎の服装を見てみれば柄シャツに薄手のボンバージャケットにタイトめのジョガーパンツ。あれあのスニーカー限定物じゃなかった?今日は髪を後ろで一つに纏めていてそんな髪型も似合うなーなんて思う。服カジュアルで良かったんだねなるほど。


「その、今日もかわいいな、似合ってる。」


緩く巻いて下ろしていた髪を撫で少しだけ照れながら言う杏寿郎。その顔を見て今朝服を選んだりメイクと髪型で悩んでモヤモヤしていた気持ちが無くなっていくのがわかった。


「ふふありがとう、フェミニンなのも似合うでしょ?」

「あぁ、名前は何でも似合うな。」


照れ隠しで言ったのに更に褒めて貰えて参ってしまう。やっぱり調子狂うなぁ。荷物を後ろの席に置かせてもらいその中から大きめのタンブラーを取り出す。


「コーヒー煎れてきたの。ブラック飲める?」

「あぁ飲めるぞ!俺も近所のパン屋さんでパンを買ってきた!朝ごはんは食べてきたか?」

「少しだけ!パン食べたいなぁ、なにパンがあるの?」


杏寿郎が「かまどベーカリー」と書かれた袋を開ければ小麦の香ばしい香りがしてくる。それぞれ好きなパンを取ればシートベルトを締めて車を発進させる杏寿郎。


「ところで今日は何処に行くの?」

「着くまで内緒だ。少し時間がかかるが大丈夫か?」

「うん大丈夫。で、何処?」

「内緒だと言っているだろう。」


君は子供か、なんて言われながらクスクス笑われた。一口飲んだブラックコーヒーが少しだけ甘く感じた。



〔Black coffee with you/ブラックコーヒーをあなたと〕


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