【14.Misunderstanding】



「で?本当はどうしてここまでしてくれたの?」

「……伝えた通り君に会いたかった。」

「本当は下心があったんでしょー!」


うりうりと煉獄さんの胸を人差し指で押せばその手をギュッと握られる。


「下心が全くないと言えば嘘になる!」

「正直だなぁ!」

「だがお付き合いもしていない女性のことを襲ったりはしない!」

「よく言うよ、先週散々襲ったくせに!」

「先週?」

「あー、私が襲ったのかな?」


キョトンと私を見つめる煉獄さんに、私も首を傾げてキョトンとしてしまう。


「シたんでしょ?」

「した?」

「5、6回。」

「??」

「セックス。」

「!?!?」


煉獄さんは驚き顔を赤くし握っている手に力が入る。痛いと言えばすまない!と慌てて離してくれた。


「何を言っているんだ!酔っているのか!?」

「このぐらいじゃ酔わないよシラフのうち!」

「ならば何故そんなことを言っているんだ!!」

「なぜって……あ、そういえばゴムちゃんと使った?私あの後念のため産婦人科行ったんだよね。」

「使ったも何も俺たちは何にもなかった!」

「はぁあ??」


全然話が噛み合わなくて混乱してきた。今更シラでも切ってるのかな?けどどうも誤魔化してる感じもしないし…。


「先週私たちものすごく酔っ払って、」

「君だけがものすごく酔っ払っていた!」

「あーはいはい、私だけがすごく酔っ払って私が挑発したから5、6回セックスしたんでしょ?忘れてほしいって言ったら強烈だから無理だって言ってたじゃん!」


煉獄さんは腕を組み少しだけうーんと考えるとあぁ!と納得した顔をした。いやいや1人で解決しないで私にも早く説明してほしいんですけど!?


「先週みんなと別れた後に君がバーへ入りショットの飲み比べをしようと誘ってきたんだ!その誘いに俺は乗ったんだが君は俺の分の酒まで飲んでしまったんだ、それが5、6杯だ!家まで送ろうと思ったが君が帰宅を拒んだので俺の家へ連れて帰った!」

「ショット5、6杯…」

「裸足でいた君の足を風呂場で洗っているときに訳あってずぶ濡れになってしまった!君は濡れた服を脱ぎ寝てしまった!」

「脱いで…寝た…」

「強烈だったぞ!!」


抱えていたクッションにガバッと顔を埋める。なんて勘違いをしていたんだろう。そら強烈過ぎて忘れられないよね。恥ずかし過ぎてこのままクッションで窒息してしまいたい。


「ワハハ!俺が連れ込んでしまったうえに説明不足ですまなかった!」

「いや、元はと言えば私が悪酔したのがいけなかったんだし……なんだ私煉獄さんとシてなかったの…」


衝撃の事実にガッカリし呟いてしまう。ん?ガッカリ??なんで私ガッカリしてるの!!


「なんだ、俺とそうならなかったのが残念なのか?」

「なっ!?」


クッションから顔をあげれば彼の指が私の頬を優しく撫でる。余裕そうな顔をしていて少しムカついた。


「残念なのは煉獄さんの方でしょ!」

「杏寿郎。」

「え?」

「先週みたいに杏寿郎と呼んでくれ名前。」

「………杏寿郎。」

「あぁ、なんだ名前。」


名前を呼ばれてときめいてしまったのが悔しくて杏寿郎の顔にクッションを押し付ければくぐもった声でよもやと言っていた。



〔Misunderstanding/誤解〕


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