【13. More and More】



彼女の部屋はきれいに片付いていた。勝手な想像だがもっと女の子女の子している部屋かと思ったが白とグレイとゴールドで色が統一されている落ち着いた部屋だった。どこかのショールームみたいな部屋だ。


「良い部屋でしょ?我が城へようこそ。」


俺が部屋を見回していたからか彼女はそう言うと座って待っててと言いリビングと仕切られていたドアの向こうに消えていった。数分で戻ってきた彼女はラフな格好に着替えていた。


「煉獄さんご飯食べてきた?」

「いやまだだが、」

「私今日は家で呑むつもりでちょっとしたおつまみとかしか買ってきてなくて、何か作れそうな都合良い材料とかもないから、何か出前取らない?」


隣に座り携帯でこのお店はどう?あーけどここもいいね!なんて言いながら俺にも見せてくる。彼女の手元にある携帯の画面を一緒に見ているから距離も近くなり、なんだか恋人同士みたいな状況に嬉しくなった。


「あっエスニック料理いいなぁ、煉獄さん好き?」

「あぁ、パクチーが入っていなければ食べれる!」

「私もパクチー嫌い!」


一緒だねなんて笑い合って、あれやこれやと商品を追加しパクチーは全部抜きで注文を完了した。俺の頼む量に彼女は驚いていたが、先週もそういえばモリモリ食べてたもんねと納得していた。


「いろいろ準備するからちょっと待ってて〜」


部屋に置いてあるスピーカーから外国の曲が流れ出す。彼女はキッチンへ消えてしまった。何か手伝うか聞いたが大丈夫と断られてしまった。ソファの前のローテーブルに買ってきたであろう食品が並べられていく。


「はいこれ、煉獄さん車で来てるから冷たいベトナム茶ね。エスニック料理に合うよ。私はこれ。」


絶対アルコールが入ってるであろうグラスをうっとりと見つめる彼女。ミントの葉がたくさん入っている、モヒートだろうか。本当に酒が好きなんだなぁと小さく笑ってしまう。


「1週間お疲れさまでした、はいカンパイ!」

「うむっカンパイ!!」


カランっとグラス同士を合わせてお茶を一口飲む。初めて飲むベトナム茶がうまいと伝えようと名前さんの方を向けば彼女はグラスの酒を全て飲み干したところだった。


「おかわりしてくる。」

「……呑むのが早すぎないか?」


先程座ったばかりだと言うのに彼女は再び立ち上がりキッチンに消えて行く。あのペースで飲み続けたら将来身体を壊すなんて余計な考えてしまった。結局彼女はラムのボトルとソーダ水と氷を持ってきてテーブルですぐに作れるようにした。お互いの職業や家族のこと等を話していると注文から30分程で料理が届いた。受け取ってーと彼女に頼まれ玄関先で料理を受け取った。支払いはカードで済ませていた様でいくらだったと聞けば、先週送ってくれたのと靴のお礼だからと強く言われ、遠慮なくご馳走になることにした。


「うわっ何これ辛っ!」

「どれどれ……辛い!辛い!」

「辛すぎておいしいかどうかもわからない!」

「本当だな!!うむっこのサーモンの生春巻きはうまいぞ!」


定番の料理から聞いたこともない料理を2人で食べ比べする。先週は気付けなかったが、名前さんは色んな表情で感情をあらわにする。話が弾めば楽しそうに声を出して笑ってくれた。先週俺に苦手意識を持っていたと言っていただけあってこんな風に素直に笑うところはあまり見れなかった。そのことを寂しく思ったが今こうして2人で過ごし笑い合っていることにすごく嬉しくなった。


「うわっ何これまっず!」


すごいしかめっ面で慌てて食べ物を酒で流し込む姿でさえ可愛いと思えてきた俺はおかしいだろうか。



〔More and More/だんだんと〕


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