【11. Absolutely Not】



「つまりアンタは、酔っ払って記憶を失くして、靴まで失くして、苦手だと思ってた男と5、6回セックスして、口説かれたところを逃げたってこと?」

「梅ちゃんもうちょっと何か言い方が…いやないね、うんそうそう、その通り。梅ちゃんは煉獄さんの同僚?の人とはどうだったの?」

「何もないわよ仕事が教師だもんお金も持ってないし途中の駅まで送ってもらってお終い!」

「せ、世知辛いなぁ…」


煉獄さんに家まで送ってもらった後に自宅に着いた安心感から寝てしまって起きたら夕日が沈みかけていて外は暗くなっていた。スマホをチェックすると梅ちゃんから「昨日の話聞かせて!今夜クラブ行こ!」とメッセージが入っていた。私も話したいなと思っていたし行くと返事をする。
土曜日の夜にふさわしい服を選んだ。胸元が広めに開いたリブの白いタンクトップをハイウエストでタイトな黒の膝上丈のスカートへインさせる。ベージュの大きめのカジュアルジャケットを羽織りアクセサリーをちりばめる。髪は全体を緩く巻いたあとに上の方で一つにまとめ後毛をいい感じに出した。ショートブーツを履いてヒールの音を鳴らしながら終電が近い時間帯の電車に乗り込み都心のクラブへ向かう。
私はおしゃれを選んでいる時間が大好きだ。おしゃれを見に纏って来れるクラブも大好き。クラブには友達と楽しく話したり呑んだり踊りに来ている。そんな大好きな場所で男遊びをして来れなくなるようなことになったら困る。だから私はクラブでは男に手を出さないし出させないようにしている。こうして梅ちゃんと話している時間の方が大事。


「アンタが酔ってお持ち帰りされるなんて珍しいわね。確かに昨日はすごいペースで呑んでたけど。それで、どうだったの?」

「それが全く何一つ覚えてないのぉ!はっ!まさか平凡過ぎて記憶にないとか!?」

「っていうか、覚えてないんならゴム使ったかも覚えてないってこと?」

「…………」


梅ちゃんの発言にダラダラと汗が出てくる。梅ちゃんはあーあ明日産婦人科行きなよと哀れみの顔で見てくる。そうか、考えてなかった…いやけど煉獄さん真面目そうだしちゃんと使ったよね?けど向こうも酔ってたらわからないし…。


「おーおーこのクラブの名物美女が揃ってるなぁ。」


悶々と考えていると私と梅ちゃんが寄り掛かっているカウンターの方へ銀髪の大きな男が寄ってくる。梅ちゃんはげっ!と言うと飲み物を持ってどこか違う場所へ行ってしまう。梅ちゃんはなぜか彼のことが嫌いで見てるとイライラするらしい…。


「相変わらずな女だなぁ。」

「梅ちゃんは天元のこと嫌いだからね!」

「ハッキリ言うなぁ名前ちゃん!」


ハハッと軽快に笑う天元。彼とはこのクラブで知り合って軽い話をするぐらいの関係だった。めっちゃイケメンで背も高くてマッチョで派手な出立ちの天元はそりゃあもうこのクラブ一のモテ男だった。


「天元が居ると他の男が女の子に相手されなくなるって嘆いてるって知ってる?けど天元の噂聞いて女の子がたくさん来るから結局男もたくさん来てるみたいだけど。」

「それも一理あるが、男がここに来る理由はお前とアイツが居るからって言うのもあるぞ?」

「あははっ私は梅ちゃん程美人じゃないよ?」

「そうかぁ?」


大きな片手で私の顔をクイッと掴むと天元が顔を覗き込んでくる。


「俺は名前の方が綺麗だと思うぞ。」

「ブッ!」

「きたねっ!!」


真剣じみた顔で言ってくるものだから至近距離で吹いてしまった。天元はグイッと私の顔を慌てて遠ざけるからケラケラ笑ってしまった。


「言ったでしょー私はこのクラブで誰の誘いにも乗らないって!」

「本当だよな、お前のこと何回口説いてきたか!」

「外で会えてたらそのお誘いにも乗ったかもしれないけどねぇ〜」

「よし名前表に出ろ。」

「言い方が怖いしそういうことじゃないってば!」


ふざけながら話していると離れた場所から梅ちゃんがすごい顔で天元を睨んでいるのに気付いて、早く彼女の元に行かなければと思った。


「ごめんね私の可愛い梅ちゃんが待ってるからもう行かなきゃ、またね天元!」

「俺も可愛い可愛い名前ちゃんのこといつでも待ってるからな!」


わざとらしい爽やかな笑顔を向けて体を寄せて来る天元の逞しい二の腕をもうっ!と言いながら肘で押し退けてその場を離れて梅ちゃんのところへ向かう。


「ごめんね梅ちゃんお待たせ、寂しかった?」

「アタシを放っておくなんて許さないんだから!」


ごめんねぇ〜と抱きつくと梅ちゃんは嬉しそうに笑っていた。



〔Absolutely Not/もちろんお断り〕


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