頭の隅で、ゆらりと霊圧の揺れる感覚があった。それはとても小さな揺れであった。神経を研ぎ澄ましていなければ感じ取れないほど小さくはなかったが、それでも揺れの大きさとしては僅かな小さいもの。恐らく普通の隊士では、もしかすれば隊長格でも感じ取ることはできないだろう。それを感じ取れる辺り、やはり飛沫の隊員として自分はそこそこの実力があるのだと嫌でもわかってしまう。

こそりと静かに息を吐き出した凛は、気づかれぬように周囲の様子を窺った。


手近にあった処理済みの書類を手に取り、ぱらぱら捲って確認する。どうやら間違いなどはないらしいそれはついさっき自身で処理していたものだ。

治療を専門とする四番隊は、戦闘時には主に後方支援で負傷者の治療や回復に当たる為、あまり前線に赴くことはない。何故なのかは、隊長副隊長と、何人かの上位席官以外は、戦力と数えられるだけの戦闘力がないと思われている為だろう。前線に赴くことがないということは、他隊と交流を持つ切っ掛けというと負傷者の治療と書類配りくらいだ。とはいえそれほど他隊の隊員と交流を図りたいわけでもないから、人間関係という面で言えば四番隊のこの位置は丁度いいと思えた。

逆に言えば、積極的にそういった行動を取れば他隊と交流を持つことは容易だ。他の隊へと潜入した仲間の話を聞いた限り、四番隊の書類は若干他隊のそれと比べれば少ないらしい。現世で言うところの病院のような役割を担っている所為か、仕事の内容が主に治療でありデスクワーク系の仕事が少ないのも頷ける。

凛はどちらかと言えばそういった治療の類を行う方面ではなく、書類を片付けるデスクワークの類を行っている。書類届けなどで他隊へ赴く機会は治療を行う者に比べたら少し多いだろう。治療が苦手というわけではないが、人と関わるような―――直接人に触れるというのは嫌いだから、多少出歩くという労働が付くものの、デスクワークをしているほうが楽だった。


少しの人間関係を築くけれど、そのほうが仲間達と接触を図るのも楽だし、必要以上の人間関係を築く必要がないからだ。



恐らく本来の自身の隊長──直弥の思惑が絡んでいるであろう先ほどの霊圧の揺れ。霊圧を確認すれば弟の旭はもう動いているようで、そろそろ行動したほうが良いかと凛は重い腰を上げた。



隊長の卯ノ花に一声掛けて四番隊を後にする。何故か胸中に渦巻く面倒臭い予感を感じつつも、凛は早足で直弥のいるであろう倉庫へ向かった。
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