向けられる視線の多さと鬱陶しさに、内心溜め息を吐きながら、雅は無言で廷内の道を静かに歩いていく。足取りは急いでいるのか、少々早足だった。

自分に向けられる視線に色を含んだものがあることに気づいて、彼女は心の中で顔を顰めた。

正直言って、かなり迷惑だしうざったい。

口には出さないけれど嫌悪感がむくむく膨れ上がっていく。そういう視線を向けられるであろうことは予測していたものの実際体験すると嫌悪しか感じない。下心を感じてしまってなんだか落ち着かないのだと思う。

そんな視線から逃れたいのと、さっさと仕事を終わらせて直弥を探しにいかなければならないから自然と速くなる足取りを止められないのは仕方ないだろう。幸いなことに書類の数は多いけれど回る隊の数は少ない。

「………」

ちくちくと刺さる視線に嫉妬のそれを感じて重い溜め息を吐きたくなった。可愛い弟分の幼子の姿が頭に浮かんで無性に会いたくなる。最近癒やしがあんまりないと思う。

すたすた歩いていくとふと感じた霊圧は雅にとってはとても慣れ親しんだもので。同時に雅が心を許せる数少ない人物の霊圧だった。

案外簡単に見つかるものらしい。想像よりも随分近い場所で感じた霊圧に、思わず安堵より呆れが先にきてしまうのは仕方ないことだと思いたい。予想ではそれなりに隊舎から離れたところにいると思っていたから、なんだか拍子抜けである。

見つからないよりは見つかって喜ぶべきなのだろうけど、あまり素直に喜ぶことができない。場所が場所だから出ようと思えばすぐにでも自力で出られる筈なのに。例え鍵をかけられていても、壊すことができる筈だ。

考えても埒があかないので考えるのをやめたけれど、それでも疑問に思うことを禁じ得ない。
とは言え元々あの男も自分と同じく考えの読めない性分なので、気にしない。考えが読めないのは、自分も同じだ。

まずは書類を届けるのが優先事項である。
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