新婚さんごっこ


(本編に直接影響はありませんが、高校生3年生くらいのつもりで書きました。)





今週末は練習が休みだと言われたので、久々に実家に帰ることにした。
その旨を家族に伝えて、いつも通り練習をこなして週末になった。
帰り道を歩いていると母さんから「克朗をビックリさせたくて母さん頑張ったよ!」と、よく分からないメールがきていた。
それに「それは楽しみだな。もうすぐ家に着くよ」と返信し、久し振りの我が家へ向かって足を進めた。



「ただいまー」


玄関に荷物を置き、靴を脱いでいると背後でバタバタとこっちへ走ってくる足音が聞こえた。
妹、弟が迎えに来てくれたようだ。


「お兄ちゃんお帰りなさい!」
「お帰りー!」
「あぁ、ただいま」


弟の頭を撫でながら、玄関に上がる。
「お兄ちゃんにお客さんが来てるよ!」と嬉しそうに言う妹の言葉を聞きながら顔を上げると、その『お客さん』がこちらに向かって歩いてくる姿が見えた。
それは家族以上に久し振りに会う人物だった。
今日実家に帰ることは家族にしか連絡していなかったので驚かされた。
何故なまえが家に居るのかとか、何故エプロンをしているのかとか、聞きたいことが色々あったが、どれから聞けば良いかと悩んでいるとなまえが微笑みながら「お帰りなさい」と声を掛けてくれた。


「えっと…ただいま」


妹たちは「母さーん!お兄ちゃん帰ってきたー!」と叫びながら再び廊下をバタバタと走っていった。
戸惑いながらなまえを見ると、苦笑し「ごめんね」と言われた。


「せっかく久々の家族水入らずだったのに」
「いや、それは構わないんだ。でもどうして家に?」


話をまとめると、スーパーで母さんと偶然出会って、そこで俺が帰ってくる事を聞いたらしい。
そして帰ろうとしたなまえを母さんが夕食に招待したそうだ。
さっきメールで送られてきた『頑張った事』とはこれのことらしい。
確かに驚いた。作戦は成功したようだ。
なまえはさっきまで母さんと夕飯の準備をしてくれていたらしい。
なるほど。だからエプロンをつけているのか。
「ごめんね、やっぱり帰ろうか?お邪魔だよね」と申し訳なさそうに言う。


「そんなことないよ。なまえさえ良ければ一緒に居たい」
「そ、そっか…。ありがとう。あ!荷物持つね!」
「重たいから良いよ」
「これくらいはさせてください」
「じゃお言葉に甘えさせてもらおうかな。ありがとう」


なまえに鞄を持ってもらい、家族が居るであろう居間に向かう。
隣をパタパタとスリッパの音を立ててついてくるなまえ。
「何か良いなぁ、こういうの」と独り言を言うと、「どういうの?」と質問された。


「ん?疲れて帰った時になまえが笑って出迎えてくれるのが、良いなぁって思ってな。疲れも吹っ飛びそうだよ。何か新婚さんみたいだな」


そう言って笑いながら頭を撫でると、下を向いて「今日の克朗君、何か変だよ」と言われた。
髪の間から赤くなった耳がチラリと見えた。照れているようだ。


「そうか?」
「うん、この間会った時はこんなじゃなかったよ。恥ずかしくてどんな顔して良いか分かんなくなる」


顔を赤くして訴えるなまえが可愛くて「仕方ないだろう、素直な気持ちだよ」と言った。
何だか背中に視線を感じたので、居間の方を見るとドアの隙間から妹達がこっちを覗いていた。


「母ちゃん!兄ちゃんがなまえちゃん口説いてる!」
「あらあら、邪魔しちゃ駄目よー」


久し振りになまえに会えたことで舞い上がっていたようだ。
妹達のことをすっかり忘れていた。次からは気を付けよう…。
すっかりバツが悪くなり、「…ごめん」と言って顔を見ると「克朗君の馬鹿」と怒られた。
恥ずかしそうにはにかみながら「でも、実は私も同じこと考えてた」と付け加えられ、俺はまた舞い上がって後のことを考えずになまえを抱きしめてしまうのだった。


【新婚さんごっこ】


(母ちゃーん!兄ちゃんがー!!)
(あらまあ)
((……どんな顔して居間に行こうか……))


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

渋沢さんは天然で爽やかなスケコマシ。
腹黒くなんてないんだ。
ちなみになまえさんは渋沢さんと同い年だけど違う学校に通っているっていう設定。
そして相変わらずオチが迷子。


2012/04/08


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