甘え下手



昼過ぎ、集中力がなくなり勉強が捗らなくなってきたので近所のコンビニに行くことにした。
玄関のドアを開けるとムワッとした空気が室内に入り込む。

ジリジリと肌を焼いてくる強い日差しから逃げるようにコンビニに入る。
菓子やら飲み物やらを物色していたら携帯が鳴った。

画面を確認しないでそれに出る。


「はい、茂庭です」
『もしもし、もにわんですか?』


明るい元気な声が聞こえてきた。
声を聞いた瞬間なまえだと分かった。
また変なアダ名考えて…。誰だよ、もにわんって…。


「……人違いです」
『え、要ちゃんですよね?』
「今までそんな風に呼ばれたことないんだけど…」


棚からペットボトルを取り出しながら「で、何か用があるんじゃないのか?」と聞く。
電話の向こうのなまえが「ふっふっふっ」と笑う。
あ、何か嫌な予感がする。


『問題です。私は今どこに居るでしょうか』
「知らないよ」
『正解は茂庭くんのお家でしたー』
「は?」


楽しそうに笑っているなまえに色々と言いたいことがあったがグッと飲み込んで「何もせずに大人しく待ってなさい」と言って電話を切った。
急いで会計を済ませ、家に帰る。

帰宅しリビングのドアを開けると、ソファーに座って寛いでいるなまえの姿があった。


「あ、もにたんおかえりー。お邪魔してまーす」
「あのなぁ…来る前に連絡しろよ」
「ごめんごめん」


そう言って悪びれもなくヘラっと笑うなまえに思わず溜息が出る。
母さんにお礼を言って、2人で俺の部屋へ向かう。
エアコンをつけっぱなしで行っていたので部屋はヒンヤリとしていた。

座卓にコンビニの袋を置いて床に座る。
机の反対側になまえも腰を下ろした。


「で、何の用ですか?」
「ここで再び問題です! 今日は何の日でしょう?」
「なまえの誕生日だろ」
「大正解!」


楽しそうに拍手をするなまえ。
そして溜息を吐く俺。


「今朝メール送ったろ?」
「うん、まあ、そうなんだけど。直接会いたくなってしまいまして」


照れ笑いをする姿は愛らしい。
しかし今日会うとは思っていなかった俺はプレゼントを用意していなかった。
来るなら連絡してくれよ、本当に…。

隠していてもしょうがないので正直にプレゼントがないことを言う。
なまえは「そうだろうと思った!」と笑った。
普通は怒るところじゃないか?
相変わらずよく分からないヤツだ。

なまえはニヤリと笑って「プレゼントはいりません」と言った。
うわ、何か良からぬことを考えている表情だぞ。
その後に続く言葉を身構えながら待った。


「プレゼントはいらないので、要には1つ私の言う事を聞いてもらいます。


私を甘やかして下さい」


「………は…?」


バッと頭を下げたなまえを呆然と見つめる。
どんな無茶ぶりをされるかと思いきや…そんな事で良いのか。

なまえは自分で言ったのに段々恥ずかしくなってきたのかソワソワし始めた。
徐々に顔が赤くなってきて視線が泳ぎだした。

その様子を見て、思わず笑いが込み上げてきた。

声を上げて笑うと彼女は「真剣にお願いしてるのに爆笑された!」とショックを受けていた。

普段思いつきの行動で俺を振り回したりしてるのに、誕生日という特別な日に頼むことがそれって…。
やっぱりなまえは変なヤツだ。
どんだけ謙虚なお願いだよ。
お誕生日様なんだからもっとワガママ言って良いだろうに。

笑い過ぎて出てきた涙を指で拭う。
なまえは膝を抱えて唇を尖らせていた。
あーあ、拗ねてら。

胡座を組んで膝をポンポンと叩く。
首を傾げるなまえ。


「おいで」


笑いながらそう言うと、俺となまえしか居ないのに左右を確認してから近付いて来た。
そして俺の横に座った。
膝に乗る度胸はなかったようだ。
クスクスと笑ったら「笑い過ぎです」と怒られた。

膝をベシベシ叩いてくる。
正直ちょっと痛い。

宥める様に頭を撫でて「悪かったよ」と言うと膝を叩いていた手を止めた。
そして目を閉じて、されるがままにしていた。
なんだか猫みたいだ。


極度の照れ屋である彼女は甘えるのが苦手で、一応付き合っているのだが甘い雰囲気になるのを避ける。
だからこうやって頭を撫でたりするのは実は初めてだったりする。
普段からコレくらい素直に甘えてきたら良いのになと思った。

ニヤつくのを我慢しながら言う。


「お前って本当に甘えるの下手くそな」
「悪うございましたね」


不貞腐れて頬を膨らますなまえが面白い。
その頬を左右に軽く引っ張ってやった。


「ご要望通り、今日はドロドロに甘やかしてあげよう」


可愛らしいお願いをしてきた甘えベタな彼女が後悔するほどに甘やかしてやろうと、真っ赤になったなまえの頬を摘みながら考えた。


【甘え下手な彼女のお願い】


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

滑り込みセーフ!!\(^o^)/
ギリギリですみませんでしたー!!
そして茂庭らしさとは一体……。
多分その内書き直す…。

相方に捧げます。
お誕生日おめでとう!

2013/08/20


prev next
back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -