視線の先には


現在私のクラスは自習の時間だ。
課題プリントが配られて、それが終わったら教室から出なければ何をしても良いと言い残して先生が教室を出ていったからである。
早々にプリントを終わらしたのか、それともやっていないのか、友達と談笑している人が居る為に教室はザワザワと騒がしい。
私はというと真面目にプリントをやっていた。
しかしどうしても分からない問題が何問かあったので、後ろの席に座っている天才を頼ることにした。


「大地ー…分からないところがあるんだけど…」


プリントを片手に振り返ると、声を掛けた相手は外を見ていた。
机の上に置かれている彼のプリントは既に終わってるようだった。さすが。
完璧な回答が書かれているプリントだけ借りても良かったが、大地が何を見ているのか気になってしまった。
課題についての質問ではない質問を投げかけてみた。


「何見てるの?」
「校庭を見ている」


校庭を見ると隣のクラスの男子が体育の授業をやっていた。
今日はサッカーのようだ。
大地の視線の先には一際体格の小さい子がいた。
楽しそうに走り回ってる姿が微笑ましい。


「風祭君?」
「あぁ」
「大地、風祭君大好きだねぇ。いつも目で追ってるようだし。何か風祭君に恋してるみたい」


冗談で笑いながらそう言ってみた。
「そんな訳ないだろう」とかツッコミを期待していった言葉だったが、大地にツッコミは無理だったようだ。
何かが引っ掛かったようで、少しうつ向いて考察を始めてしまった。ブツブツと呟いている。
ヒラヒラと顔の前で手を振りながら「おーい」と声を掛けるが聞こえていないようだ。変なスイッチ入れちゃったな…。
困り果てていると突然パッと顔を上げた。考察は終わったようだ。
当初の目的を果たそうとプリントの解けなかった問題を指差し「ところでこの問題なんだけど」と話を切り出そうとしたら、大地の方が先に喋り出した。


「恋をするとその相手を目で追うのか?」
「うん、多分そうなんじゃないかな」
「では、俺がなまえを目で追ってしまうのはお前に恋をしてるからなんだな」


突然言われた言葉に思考が停止した。
たっぷり5秒経ってから、目の前の無表情な男子の口から放たれた言葉の意味がやっと理解出来た。
顔に熱が集中していくのが分かった。
こっちの気持ちが分かってないのか、大地は私の顔をジッと見ている。


「どうした、顔が赤い」
「何でだろうね…」


視線を逸らしながら適当に返す。
何コレ居た堪れない。
プリントの空欄の部分は諦めて、前を向こう。一刻も早く逃げたい。


「ごめん、大地。プリント良いや、自分で考えてみるね」
「そうか。ところで、何故なまえは俺が風祭を目で追っている事を知っていたんだ?」
「な、何でだろうね!」


急いで前に向き直り、プリントを睨みつける。
プリントを見ていても当然答えは分からない。そりゃそうだよ分からないから聞こうと思ったんだもん。
心臓は煩いくらいに高鳴って、顔も火が出るくらいに熱くなる。
授業終了のチャイムが鳴らないで欲しいと思ったのは初めてかもしれない。
「授業終わったらどうすれば良いのだろう」とさっきとは違い理由で頭を抱えることになったのであった。
あー、余計なこと言わなきゃ良かった!


【視線の先には想い人】


(なまえの発言や行動から考察すると、なまえは俺のことが…(大地君ちょっと黙って下さい。本当にお願いしますから)



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

ずっと前に書いたヤツを加筆修正。
ところで、タイトルのセンスが驚くほど無いのだが…。


2012/04/06


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