サラサラ、フワフワ


日直日誌を書き終えて顔を上げると、教室にはほとんど人がいなかった。
私の他には数人の女子集団だけだ。
先生方が出張だかなんかで17時までに帰るように言われているので、今日はみんな帰るのが早い。
教室の一角で雑談をしていた女子達も直ぐに出ていくだろう。鞄を持って席を立とうとしていた。
「戸締まりをすればもう帰れるかな?」と思い教室を見回したら、さっきの集団とは別にまだ1人残っていた。
一生懸命に何かを書いている。
面倒なことに日直は戸締まりをして最後に教室を出なければいけない。
残っていた人、桜庭に近付き声を掛ける。


「桜庭ー、教室閉めたいのだが…」
「ちょっ、ちょっと待て!すぐ!すぐに終わるから!」
「…何やってるの?」


桜庭が一生懸命書いているものを覗き込んで見てみる。
それは見覚えのない数学のプリントだった。


「特別課題だと」
「なるほどね。桜庭、たまに居ないもんね」
「俺明日も休むから今日中に提出しないといけねぇんだよ…なぁ、同じプリント持ってねぇ?」
「残念ながら初めて見る問題です」
「くっそぉー…」


悔しそうに唸りながら再び問題に取り組む。
彼に戸締まりを任せて帰っても良かったが、この後に予定があるわけでもないので待つことにした。
自分の机から鞄を持ってきて、桜庭の前の席に腰掛ける。


「あ、わりぃ帰るか?」
「んー、待ってるよ。すぐ終わるんでしょ?」
「おうよ!俺にかかればこんな問題!」
「はいはい。じゃあ本読んでるね」


本を読みつつ桜庭を盗み見ると、煩わしそうに髪をかき上げていた。
下を向くと男子にしては長めの髪が顔に掛かるらしい。
いつもはカチューシャや髪ゴムなどで対策をしているのに、今日はどちらも無いようだ。
髪が顔に掛かるたびに眉間に皺を寄せ髪を耳に掛け直す。
随分と鬱陶しそうだ。
自分の腕を見ると使っていない髪ゴムがいくつかあった。


「これ使う?」
「良いのか?」
「うん。ねぇ、結んで良い?」
「は?いや、自分で結べるぜ?」
「まぁ、そうだけど。桜庭の髪を弄りたいなって思いまして。駄目?」
「まぁ…別に、良いけど…」
「わーい、ありがとう」


椅子から立ち上がり桜庭の後ろに回って髪を手に取る。
うわ、サラサラ。もの凄く羨ましい。
色素が薄く癖っ毛な私は、黒髪ストレートというものにとても憧れている。
無いもの強請りと分かっているが、一度で良いのでなってみたいと昔から思っている。
男の子なのに女の子のようにサラサラで綺麗なストレートの髪を持っている桜庭に若干嫉妬した。


「はい、完了しましたよー」
「おう、サンキュ」
「桜庭の髪、気持ち良いね」
「気持ち良いって何だよ」
「サラサラで柔らかくて、何か猫みたい」
「…褒めてんのか?」
「うん、最上級の褒め言葉」


「ま、コレは俺のチャームポイントだから当然だな」とか調子に乗った事を言っている桜庭を放っといて、結んだ毛先をクルクルと弄る。


「良いなー。好きだなー、桜庭の髪。サラサラストレート。良いなぁー」
「おー……課題やっても良いか?」
「あ、ごめんね」


後ろにいるので表情は見えなかったが、少し照れ臭そうに頬を掻いているようだった。
結った事で 髪が顔に掛からなくなり集中力の上がった桜庭は、どんどん課題を進めていった。
少し質問されたが、それ以外は無駄な話などはしなかった。




「終わったー!よし!帰るぞ!」
「本当に直ぐに終わったねー。30分くらいで終わったねー」
「ごめん、悪かったって」
「ま、良いけど。じゃあさっさと帰りましょうか」


職員室にいる先生に日直日誌と課題プリントを提出し、そのまま2人で下駄箱に向かった。
運動靴に履き替え昇降口から出る。
門まで何となく2人で歩いていたが、家が逆の方向だったのでそこで別れることになった。


「じゃあ、お疲れ様でした。またね」


桜庭に向かって手を振ったら徐ろに頭の上に手を置かれた。
そのままグシャグシャと乱暴に撫でられる。
驚いて桜庭を見ると、少し意地の悪い感じの笑顔を浮かべていた。


「俺もお前のトイプードルみたいにフワフワした感じの髪、好きだぜ。まぁ 羨ましくはねぇけど」
「それって褒めてるの?」
「最上級の褒め言葉だ」
「あ、ありがとう…」
「人のもん羨ましがるんじゃなくて自分のもん好きになったれよ。良いじゃん、フワフワ」
「…努力してみる」
「おう。いやー、俺良いこと言ったわー。んじゃあな」
「…最後の一言がなければ最高だったよ…」



もう一度私の髪をグシャグシャにして、桜庭は走り去っていった。
髪を手櫛で整えながら「この髪も悪くないかな 」と少し思った。我ながら単純だが。



【サラサラ、フワフワ】


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

誰だお前!(((゜д゜;)
オチが弱いなぁ。
あと名前変換がない。
とりあえず桜庭の髪の毛に触りたかっただけです。
お粗末様でした m(_ _)m


2012/03/31


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