約束



※【出会う】→【探す】→【見つける】の続きです。

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先日、『しょうちゃん』こと、なまえっちと友達になった。

なまえっちと先生は毎週水曜日の昼休みに図書準備室で2人でお茶をしているということを教えてもらったので、暇な時に俺も顔を出すことにした。

ちなみに図書準備室は貴重な蔵書などが置かれているので、基本的には生徒の立ち入りは禁止となっている。
なまえっちは先生と仲良しだから特別に許されているらしい。
他に人が来ないと分かっているので凄く気が楽だ。

ソファーに寝転がりながらお茶が入るのを待っていたら「だらしないなぁ」と呆れられた。


「そんなだらしない姿ファンの子が見たら泣くよ?」
「ファンの子がいないからやってるんすよー」
「まったく…。先生も何とか言ってやって下さいよ」
「黄瀬くん、そこの引き出しにしょうちゃんのブランケットがあるよー」
「わーいお借りしまーす」
「原ちゃん…そうじゃないでしょう…。はい、お茶が入りましたよ」
「「わーい!」」


なまえっちが作ってきたお菓子を食べ、お茶を飲む。うん、相変わらず美味い。
思わず顔が綻んでしまう。
その様子を正面からジッと観察するように見られる。


「…何すか?」
「いや、黄瀬くんって本当にかっこいいのかなぁと思って」
「本人を前にしてそれはあんまりじゃないッスか…」


そう言って少ししょんぼりしたら、「あー、いや、違う違う。そうじゃなくて」と慌てて訂正した。


「黄瀬くんってさ、かっこいいって感じじゃなくて可愛いって感じだよなって思って」


可愛いって…。
まあ、確かによく言われるっスけど。
何かなまえっちに言われるのは嬉しくないというか…。複雑な気持ちになった。

ムスっとしながらお菓子を頬張る。
「あーあ、黄瀬くん怒っちゃったよー?」と先生が楽しそうに言う。
いや、別に怒ってはないんスけどね。
ただ、何となく納得出来ないだけで。

むくれていると、お茶を飲み終わった先生が「じゃあ図書室行ってるから、後で鍵返しに来てねー」と言って部屋を出て行ってしまった。

「黄瀬くんごめんってー。私の分のお菓子あげるから機嫌直してよー」と苦笑いしながらなまえっちが言う。
何だかその様子が小さい子どもの機嫌を取るように見えた。

なまえっちのお菓子を摘みながら「なまえっち、ちょいちょい俺のことガキ扱いするッスよね」と文句を言った。
彼女はキョトンとして「いや、まあ、黄瀬くん年下だしねぇ」と衝撃の言葉を放った。


「………え……?」
「え?」
「なまえっちって何年生なんスか…?」
「え? 3年だよ?」


3年生ということは、笠松先輩たちと同い年ということで…。


「と、年上ぇ?!」
「そうだよー! 今更気付いたんか!」


なまえっちの上履きを見てみたら確かに3年生の学年カラーの物だった。
通りで1年の教室を探しても見つからない訳だ…。

しかし、しかしだ。

年上だからといってなまえっちに子ども扱いされるのは凄く嫌だ。
ましてや『可愛い』だなんて言われて嬉しいわけがない。
他の人になんと言われようが構わないが、彼女には『かっこいい』と思って欲しい。
何故だかは分からないが。

なまえっちは一般の人と何処かズレているので、俺が載っている雑誌を見ても大して効果はないだろう…。
だとしたら、これしか方法はない。

正面に座っているなまえっちの手を取り、真剣な顔をして言う。


「なまえっち、今度バスケ部の練習観に来て」
「えー…どうして?」
「俺のことカッコイイって思わせるためッスよ!」


なまえっちは「大丈夫だヨ、観に行かなくても黄瀬くんがかっこいいことは分かってるヨ」と棒読みで返す。
コイツ、観に来る気ないッスね…。

手をギューッと握りながら「暇なんだったら観に来てよー。『黄瀬くんかっこいい!』って絶対思うからー」と駄々をこねるように言うと、「んー…じゃあ今度気が向いたらね」と苦笑いをしながらも承諾してくれた。

握った手を上下に揺さぶり、「絶対ッスよ! 約束しましたからね! 明日来てくださいッス!」と言ったら、空いている手で頭を撫でられた。


「えー、明日?」
「明日ッス!」
「…分かった、分かった。『かっこいい黄瀬くん』を観に行くね」
「……またガキ扱いする……」
「してない、してない」


「よーしよーし」と言いながら俺の髪をぐしゃぐしゃにする。
ガキ扱いされるのは腹立つし嫌だけど、頭を撫でられるのは悪くないかもと思った。
何でかは分からないが。
ぐしゃぐしゃになってしまった髪をなまえっちが手櫛で整える。
それを甘んじて受け入れながら「絶対見返してやるッス」と心の中で呟いた。


【約束】


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続く。
タイトル思い付かなかった…。

2012/12/

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