見つける


※【出会う】→【探す】の続きです。

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そんなこんなで翌日の昼休みッス。
俺は今、図書準備室の前にいるんですが、森山先輩…。
開いてないッス…。酷すぎる…。

部屋の前で立ち尽くしていると、後ろから「どうかしましたかー?」と声を掛けられた。
「いえ、何でもないッス」と言いながら振り返る。
そこには何故かヤカンを持った『しょうちゃん』がいて、「じゃあちょっと退いてもらえませんかね」と言われた。

いた。いましたよ、森山先輩。一瞬でも騙されたとか思ってすんませんッス。

生徒立ち入り禁止と書いてある扉の鍵を開け、当然のように室内へ入って行こうとする彼女の手を掴む。
やっと、やっと見つけたッス。

不審そうに彼女が俺の顔を見上げる。
そこでやっと俺だと気付いたようで驚いた顔をしていた。


「あ。この間のキラキラくん」
「え、何すかその呼び方」
「ああ、違った。えっと、えーと…き、黄瀬くん!」


名前を呼ばれるだけでこんなに時間が掛かったの初めてッスよ…。
でも俺のこと覚えててくれたのかと思うとちょっと嬉しかった。
苦笑いしながら「この間はどーも」と言うと「どした? 今日もサボり?」と聞かれた。


「違うっすよ。しょうちゃんに会いに来たんス」
「え? 何で?」


何でと聞かれたら…何でだろう。
時間が掛かり過ぎてもう目的が分からなくなっていた。

俺が理由を考えていると「まあ、なんだ。中入りなよ」と言われた。

中に入るとソファーに座るように促される。
しょうちゃんはヤカンから窓際にある電気ポットに水を移してお湯を沸かしていた。


「これから原センセーとお茶するんよ。黄瀬くんも暇ならどう?」
「え、良いんすか?」
「もちろん。じゃあ準備するねー」


「私の淹れるお茶は美味いんだぜー」と言いながら楽しそうにお茶の用意をする。

さて、会えたは良いがどうしよう。
別に用事があった訳じゃないし、話しのネタがない。
何というか、ちょっと気まずい。

どうしようかと考えていると、彼女が「そういえば」と言った。


「バスケ部にいる兄から聞いたんだけどさ、黄瀬くんモデルさんなんだって?」
「…そうっすよー」
「あと、『キセキの世代』っていって中高バスケ界でも有名だって聞いたよ」
「まあ、キセキの中でも俺は下っ端なんすけどねー」
「ごめんね、知らなくて」
「別に良いッスよ、気にしないで」
「そう? すまんね」


お茶菓子をソファーの前にある背の低いテーブルに置きながら、「でもアレだね。ずっと好奇の目を向けられてたら疲れちゃうよねー。そりゃ授業も休みたくなるってもんですよねー」と彼女は言った。
俺がモデルとかキセキの世代だと知っても、彼女の態度は最初と変わっていない。

「何でアンタはそういう風に俺を見ないんスか?」と聞いてみた。


「んー…だってねぇ。私が会ったのは『モデルの黄瀬くん』でも『キセキの世代』の黄瀬くんでもないからねぇ。『授業サボっちゃう問題児な黄瀬くん』ってイメージの方が強いし」と、言われた。

分かるような、分からないような…。
「ふーん」と短く返して、お茶菓子を摘み食いしようとしたら「まだ駄目ですっ」と言って手を叩かれた。いてっ。

きっとしょうちゃんは俺以外の人にもこうやって接しているんだろうな。
これが彼女の自然なのだろう。
…何か特別扱いされずに普通に接してもらえるのって心地良いッスね。
………あ、そうか。分かった。

お湯が沸いた。お茶を淹れにしょうちゃんが席を立つ。
その背中に「俺、今日ここに来た理由思い出したッス」と声を掛ける。
「おお、それは良かった。で、なんで?」振り返らずに彼女が言う。


「しょうちゃん、俺と友達になってくれないッスか?」と提案する。
「へ?」と驚いた顔をしながら彼女が振り返った。

「ダメっすか?」と首を傾げながら聞く。
彼女は気恥かしそうに頭を掻いた。


「えーと…なんだ…何というか…お、お安い御用だ!」
「何すかその返事」
「面と向かってそんなこと言われるの初めてだから何て答えれば良いか分かんなかったんだよ!」


ガチャンとテーブルにティーセットを置いて、俺の正面にあるソファーに腰を下ろす。
そしてバッと右手を突き出してきた。
「じゃあよろしく!」と顔を赤くしながら半ば叫ぶように言う。
その手を取り「よろしくッス」と握手をした。


「あ、そうだ。しょうちゃん名前教えてよ」
「そういえば名乗ってなかったね。改めまして、私はこ「しょうちゃーん! 紅茶はいったー? …あらあら、先生お邪魔だったかしら?」


握手をしたままだった手を慌てて離す。
先生タイミング良すぎッス…。名前聞こえなかったし…。
しょうちゃんが「あー…絶妙なタイミングだったよ原ちゃんセンセー」と苦笑いしながら言った。
原先生が「お邪魔しちゃってごめんなさいねー。先生のことは気にしないで良いからねー」と言いながらしょうちゃんの隣に座る。

しょうちゃんが「なまえで良いよ」と苦笑いをしながら言ってきた。
なまえって言うんすか。どこが『しょうちゃん』の由来になったんだろうか…。


「了解ッス、なまえっち」
「……なにその『っち』って」
「気にしない、気にしない」
「分かったよ」


3人の前にお茶を置いて「さあ召し上がれ」となまえっちが言う。
お茶もお茶菓子もなまえっちが言ってた通り絶品だった。


【見つける】

(学校の中にまた一つ『俺』の居場所が出来た)



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はっはっはっ。
話しまとまんないですわー^^;

続く。
次回からやっと普通に名前で呼べる…。

Title by
確かに恋だった

2012/12/10


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