のどあめ


「おはよう」
「おはよう一馬。酷い声だね。風邪?」


黙って頷く。
最近暖かかったり寒かったり気温が安定していなかった。
なのに俺は昨日窓を全開で寝てしまい、見事に風邪を引いてしまったのである。
喉をやられて酷い声になっている。
上手く出ない声にもどかしさを感じつつ、自分の席に荷物を置いて座る。
隣のコイツは何やらカバンの中を漁っていた。


「手の平を上にして、両手出して」


突然そんな事を言われた。
何だかよく分からなかったが、とりあえず言われた通りにしてみた。
するとその上にバラバラと物が乗せられる。
乗せられた物は色とりどりの飴だった。


「あげる。のど飴もあるはずだよ」


「こんなに沢山はいらない」と言うと、「人の厚意には甘えときなさい」と言われた。
開いていた手をギュッと手の平を合わせるような形で閉じられる。


「じゃあ貰う。ありがとう」
「どういたしまして」


貰った飴を開け、口に含む。
レモンの味がじんわりと広がり、喉が潤う感じがする。
隣のコイツは俺が飴を舐めたのを見て満足そうに笑っていた。


「早く治ると良いね」
「んー」


コロンと口の中で飴を転がす。甘い。
俺の顔を見ながら独り言のように呟く


「一馬と喋れないとつまんないよ。声が聞けないのも寂しいし」


不意打ちでそんなことを言われて、舐め始めたばかりの飴をそのまま飲み込みそうになった。
何だよ…、恥ずかしいヤツ。
再びコロコロと舌で飴玉を転がしながら「早く喉治んないかな」とか思ってた俺は単純なのかもしれない。


【のどあめ】



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

5月の拍手でした。
私が書く真田君は何故かいつも体調が悪いですね。
ごめんね、かじゅまくん。

2012/05 拍手,2012/06/02 収納

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