身長差


学校からの帰り道、人のいない河原を歩いていたら最近ではあまり見ない物が視界に入ってきた。
へえ…鯉のぼりか。
もうすぐこどもの日だもんなぁ。
大きい鯉のぼり何て久しく見ることが無かったが、有るところには有るんだ。何か良いな。
見事な鯉のぼりに感心しながら、歌を口ずさんだ。
誰もいないので多少大きい声を出しても恥ずかしくない。


「屋根よーりーたーかーいっ「やあ、ご機嫌だねー」


ひょこっと私の前に現れたソイツ。
デカい体で視界が遮られ、鯉のぼりが見えなくなった。
ブスーっとしながらソイツの名前を呟く。


「…須釜寿樹」
「いやぁ、さすがに屋根より高くないよ?」
「知ってるわ。巨〇兵」
「ジブ〇ネタとは際どいねー」
「もう、良いから退いてよ。私の視界を遮らないで」
「ああ、ごめん」


須釜が退いたことで視界が開ける。
私の視線を追って、須釜も鯉のぼりを見上げる。


「鯉のぼりかー。そう言えばうちは最近出してないなぁ」
「それ以上大きく健やかに育っても困るもんね」
「じゃあうちの鯉のぼりをなまえの家に飾りに行ってあげる。大きく健やかに育ちますようにーって」
「いらんわ」


そんな会話をしながら190センチと150センチが並んで鯉のぼりを見上げている。
身長差は40センチ。大きな差だ。
大きく健やかに育ちすぎだろう。

須釜が隣にいると自分の身長が余計に小さく感じてしまうからちょっと嫌だ。
表情が見えにくいし、見えている景色が全然違うから須釜を遠くに感じてしまうのも嫌な理由の1つである。
私があと10センチ高くて、須釜があと10センチ低かったらまだ良かったのに。
小さい声で「須釜のお母さん、あと3年早く仕舞ってくれれば良かったのに」と呟いたら笑われた。


「別に鯉のぼりのお陰でここまで大きくなったわけじゃないよ?」
「分かってます。あー、大きくなりたい。せめてあと10センチ」
「んー…じゃあ一瞬で大きくしてあげようか?」
「え?」


その瞬間、身体が浮いた。須釜抱き上げられたのだ。
驚いて須釜を見やると思いの外近くに顔があった。
須釜は楽しそうに「ほら、大きくなれた」とか言ってる。
慌てていると「コレで身長差は気にならないねー。いつも気にしてるもんねー」とクスクス笑いながら須釜が言う。気付かれていたのか…。
恥ずかしくて両手で顔を覆った。


「で、190センチの世界はどうですか?」


言われてから周りを見渡してみる。
遠い地面。広く見える景色。いつもよりグっと近い距離にある須釜の顔。
須釜を見ながら答える。


「悪くないですね」


すると須釜はニッコリと笑った。
いつもは遠くにあって見えにくい表情が近距離ではっきり見えて、何か…心臓に悪かった。

40センチの身長差はなかなか埋まらなくて、やっぱり遠く感じて嫌だって気持ちはある。
でも、須釜がいつも見ている景色を同じ目線で見ることが出来て、ちょっと距離が埋まった気がした。
うん。良い景色だ。



【身長差】


(じゃあ、帰ろうか)
(じゃあ降ろしてよ)
(えー)
(このまま帰るなんて恥ずかしいから嫌だよ)
(嫌がってるのって良いよねー)
(変態か)
(落とすよー)
(落とさず降ろしてください)
(落とすねー)
(ごめんなさい)
(じゃあこのまま帰ろう)
(……すがまっくろくろすけ)
(好きだねぇ、ジブ○)



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

拍手にしたかったのに短くまとまらなかった。
難しい。
そして鯉のぼり関係なくなった。
「すがまっくろくろすけ」は某方のネタを頂きました。
ありがとうございました。


2012/05/03


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