すずむら | ナノ



「…へ?すいません先輩、もう一回」


『だから、プレゼントはおまえがいいって言ってるの。耳大丈夫?機能してる?』


「い、一応…でも頭が追いついてないです」


『はあ…ほんと、なまえは変わらないね』



その言葉そっくりそのままお返しします、椎名先輩。




4月19日。晴れ。大学は休講、バイトも休みだった私は家でだらだらと過ごしていた。
すると


―ピンポーン


聞こえたチャイムにはーいと気だるげな返事をしつつドアを開けると



『よ。てゆうかおまえさ、今ちゃんと姿確認してから開けた?そんなんじゃ襲われても文句言えないんだからね?ま、なまえを襲うやつなんていないだろうけど』



懐かしすぎる姿とマシンガントーク。
突然の訪問に驚きと疑問を抱きながら


「すいません…お久しぶりです先輩。あ、どうぞ」
と言い先輩を部屋に入れた。




『なまえと話すの久々じゃない?柾輝たちとはちょいちょい連絡取ってたけど…もしかして2年くらい会ってなかった?』


「そのくらいですね。まあ私は雑誌とかテレビで先輩のこと見たりしてたんでそんなに久しぶりな感じしないですけど」


『ふーん。なに、そんなに俺のこと気になってたの?』


「……まあ、一応先輩なんで。雑誌は柾輝とかも載ってたりしてたんで立ち読みしただけです」


『…あっそ。』


私がそう言うと先輩はむっとした顔をし、不機嫌オーラを出しながらさっき煎れたコーヒーを飲んだ。


本当は立ち読みはしていない。
雑誌に椎名先輩が載ってると知った瞬間本屋に走り買いに行った。

試合だって夜中にやってることがほとんどだけど出来る限りはリアルタイムで見ているし録画もしてる。


そんなこと言える訳もないので
誤魔化したら不機嫌になってしまった。
まずい、どうしよう。
とりあえず話を変えようと思い口を開いたところで先輩が先に話し出した。


「あの『今日さ』…はい」


『俺誕生日なんだよね』


「…そうなんですか、おめでとうございます」


『そうなんですか、ってもっとなんか反応あるだろ…まあいいや。でさ、俺欲しいものあるんだよね。今日はそれを貰いに来た』


意味が分からない。
あの先輩が、私なんかにプレゼントを貰うためだけにスペインから帰国?


「欲しいもの?しかも貰いに来たって…何が欲しいんですか?」


と聞くと先輩は悪巧みをする時の、にっこりとした笑顔で


『おまえ』


と言った。そして冒頭へ戻る。


「え、え?先輩それなんの冗談ですか?」


『はあ?俺がこんな冗談言うわけないだろ。なに、疑ってんの?』


「はい。だっていきなり来たかと思えばそんなこと言って…そうですかどうぞもらってください、とは言えません」


『…おまえほんっと可愛くないね。』


「…あなたの後輩なんで。」


『なまえ…「すいません、可愛い後輩じゃなくて。久々に会えたのに申し訳ないんですけど、これから出掛けるんで帰ってもら」なまえ!』


突然出された大きな声に
思わず押し黙り俯く。

…絶対怒ってるし呆れてる。
謝りたいけど今顔を上げたら
泣く自信しかないので
俯いたままでいると
先輩の手が視界に入ってくる。

咄嗟に仰け反ったけど
あっさりと両手で顔を挟まれ
上を向かされる。
その先には真剣な顔をした先輩。

そしてこう言った。





『一度しか言わないから。




――なまえが好きだ。
向こうにいる間、なまえのこと忘れたことなんてなかった。
向こうでの生活が落ち着いたら
迎えに行くって決めてた。』


「せんぱい、」


『なまえと一緒にいたい。
俺のこと、一番近くで見ててほしい。

…だから、おまえの人生、俺にちょうだい?』


先輩はずるい。そんな優しい顔して言われたら、


「…っわたしで、いいんですか」


『おまえ以外のやつを連れて行く気はないよ。で、返事は?』


――断れるわけ、ない。
「……ついて行ってあげても、いいですよ」


『そんな泣き顔で強がられても。ふ、やっぱ可愛げないやつ。まあそんなとこも好きだけどね』


「!…わたしも、すきです。ずっと前から」


『知ってる。』


「これから、よろしくお願いします…先輩」


『…とりあえずその先輩ってのと敬語やめるのから始めような。…ほら、目閉じて』



4月19日。
晴れのち嵐のち、快晴。



<それは突然 嵐のように>


(…誕生日おめでとう。だいすき、だよ)
(……かわいいやつ)


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椎名さん誕生日おめでとう…!
29か…素敵(^q^)じゅるり←
いつまでもサッカーバカでいてください!

そして読んでいただいてありがとうございました(^(エ)^)