すずむら | ナノ



普段あまりくっつきたがらない(というか出来ない)人が自らそうしてきた時の破壊力は半端じゃない。

今みたいに。



「ゆ、ユキ?」


「あ?なんだよ」


「あの…なんか近くない?」



休日、私の部屋。
特にすることもないので各々雑誌を読んでいた。
すると先に雑誌を読み終わったらしいユキが立ち上がった。
トイレにでも行くのかな、と思っていたらまた座った。

1ミリの隙間もないくらいの隣に。
ユキのがっしりした肩と私の腕が触れ合いどきりとする。



「…雑誌、もう読まないの?」


「おー、もういいわ」



と言ってユキは私に寄りかかるような体勢をとった。

付き合ってから初めてされる行動に肩をびくりと震わせてしまう。

なんなんだ、どうしたんだ今日のユキは。
嬉しくない訳ではない。
むしろ飛び上がりそうな程嬉しいけれど
それ以上に驚きの方が大きい。

驚きすぎて硬直していると頭上から「なまえ」という声が聞こえる。



「な、なに?」


「…別に」


「え、なにそれ」


「いいから雑誌読んでろ」



そう言ったきり黙ってしまったので再び雑誌を読み進める。

次のページにいこうと捲ったら、頬に少しかさついた感触。
勢いよく横を向くとこちらを見ているユキと目が合った。

キス、された。
キス自体は初めてではないが
こんな不意打ちでなんて普段の彼なら絶対にしないので動揺してしまう。



「え、なに、え?」


「なにって…キスだけど」


「いや、それは分かるけど…
ほんとに今日どうしたの?
なんかあった?」



そう言うとユキは少しムッとした顔をした後
私の頬に手を添え



「…何か理由なきゃ嫌かよ」



と言った。
真剣な瞳にドキドキしつつ
「…別に嫌じゃないけど」
と言うと
「じゃあいいだろ」
と言って顔を近付けてくるユキ。


もうこれは何を言ってもダメだろう。
そう思い目を瞑る。



「なまえ」



名前を呼ばれた、気がした。



「なまえ…なまえ」



何度も呼ばれてる上に待っている感触が来ず
不思議に思いながら目を開ける、と。



「おい…帰るぞ起きろ」


「あれ…ユキ?」


「おう。わりぃ遅くなった。帰るぞ」



目を開けると私の顔を除き込むユキがいた。
辺りを見回すと家にはないような机や椅子。
そして帰るぞ、と言うユキ。
どうやら寝ていたらしい。
と言うことはアレは、



「…あー…なんだ夢か…」


「?なんの夢見てたんだよ」


「んー…ユキにちゅーされる夢。
夢の中のユキ強引だったなー」


そう言うとユキは顔を真っ赤にしながら
「アホなこと言ってねえで帰るぞバカ」
と言って教室を出てしまった。

夢の中のユキもすごく素敵だったけど
やっぱり本物には敵わないな、と思いつつ後を追った。




<体を擦り寄せる>


――――――――――

かまってちゃん笠松を目指したら撃沈しました_(:3 」∠)_
つ、次は頑張ります…

ありがとうございました!

お題お借りしました。