すずむら | ナノ






今年もやってきた恋人たちの一大イベントであるクリスマス。

去年まではリア充爆発しろと念じる役に徹していたが今年は違う。
数ヵ月前に出来たかわいい彼女(兼バスケ部マネージャー)とバラ色の日を過ごそうと意を決して彼女を誘う。



「なまえ。明日、どこかに行かないか?デートしよう」



そんな俺の言葉に彼女はにこやかに笑って返事をする。



「明日も部活じゃない。サボれって言うの?」と。


「…彼女が出来たのにイベントに参加出来ない…だと…?」


「だって私たちだけ休んだらバスケ部全員からどやされるだろうし」


「確かにな…
はあ…今年こそはむさ苦しいクリスマスから開放されると思ったのに…」


「こればっかりは仕方ないね」



あっさりとしたなまえの態度に若干の寂しさを覚える。

クリスマスに部活なんて今年に始まったことではないし、こうなることも予想はしていた。
分かっていたつもりでも頭では彼女とのクリスマスデートを妄想してしまっていた訳で。


現実は厳しい…と机に突っ伏したところでなまえが楽しそうに「じゃあさ、」と言葉を発した。



「部活終わったら遠回りして帰ろうよ」


「…え?」


「遠回りしてご飯でも食べて、寒いけどゆっくり帰ろう?」


「…そんなんでいいのか?」



もっとこう、クリスマスでしか出来ないこととかしなくていいのか?
と聞くと、少し照れた様子のなまえが口を開いた。



「いいの。だって、森山と一緒ならそれだけで嬉しいもん」



その言葉を理解した瞬間、胸を締め付けられるような感覚がした。

付き合う時といい、なまえの発言にはドキドキさせられっぱなしだ。

なまえには敵わないなと顔を見ると



「明日、楽しみだね」



なんて、本当に嬉しそうに言うから。



「…そうだな」



と言ってさっきよりも赤いであろう顔を隠すように机に突っ伏した。
そして、バスケ部の奴らに自慢しようと一人頬を弛ませた。




<響く音色は、>


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設定をしおんの森山の話から借りました。ありがとう。

素直にデレるヒロインと
それにたじたじな森山。うまい。


読んでくださってありがとうございました!
メリークリスマス!