すずむら | ナノ




110対98。
海常の夏が、終わった。


負けてしまった。
あんなに練習してきたのに。

届かなかった。
努力を積み重ねてきたのに。

悔しかった。
見てることしか出来ない自分が。


会場を出て駅までの道を歩く。
会話はない。


みんなを元気付ける一言を、と思うのだがなかなか出てこない。

それに言葉を発したら
試合終了から堪えていたものが
溢れてしまいそうだった。


なので会場を出てから一言も喋っていない。
それも不審がられるから
なにか言いたいけど
何を伝えたらいいのかわからない。


どうしよう、とぐるぐる考えていると目の前を歩いていた笠松が急に立ち止まった。



「おわ、なに?どうしたの?」

私がそう言うと、笠松はくるりとこちらを向いて話し出した。



「みょうじ…、

ずっと支えてくれてたのに
勝てなくて、ごめん。」



「え…」



「冬は必ず、必ず優勝するから…
もう少しだけ俺らのこと
支えててほしい」



そんなこと、



「…みょうじ?」



「…か、」



「か?」



ここで言うのは反則だ



「笠松の、ばか…っ」



「んなっ、バカってなん…
っておい!なんで泣くんだよ!」



「だっ、て!かさまつ、がっ」



「本音言っただけだろ!?」



それがいけないんだばか。
そう言ってやりたいのに
言葉は出ず、代わりに涙が溢れだす。

泣いている私をなだめようとする笠松。
けれど堪えていた涙は止まる気配すらない。


私たちがいないことに気付いた4人がこちらに戻ってきた。



「どうした?帰らないの…
おいお前ら…!笠松がマネージャー泣かせてるぞ!」



「え!?ちょっとセンパイ何したんスか!」



「みょうじセンパイ大丈夫すか!
ハ(ラ)痛いんすか!?」



「笠松何か言ったのか?」



「大したこと言ってねーよ!
でも…泣かせて、悪い」




顔を上げると、みんなの焦った顔と困った顔が私を見ていた。

その表情が、おかしくて

気付けば涙も止まっていた。



「ごめん、もう大丈夫。
いきなり泣いてごめんね。

…私は、

見てることしか出来ないけど
出来る限り支えていくから、

…冬は、絶対勝とうね」



私がそう言うと
みんなは力強く頷いてくれた。



「万が一優勝出来なかったら
誠凛みたいにやろっか!
全裸で告白!」



「絶対嫌っす!凍死す(る)っすよ!」



「んー…じゃあ卒業式にする?
3月だから暖かいよ?」



「最大の恥を残して卒業するのは嫌だな…」



「…こうなったら絶対優勝すんぞお前ら」



「だから、俺らのこと
もうしばらく支えててくれな」



「…仕方ないなーもう」



「そうっスよ!みょうじセンパイは勝利の女神なんスから!」



「……」



「え!?なんでスルーなんスか!?」





ゴールはまだ先。


それまで一緒に、歩いていこう。


<道の途中>

―――――――――

アニメで海常がかっこよすぎたので。

それはそうとタイトルが完全にかがみん