わたしの心はいつしか幻想に取り込まれてしまったのだった。
空は海。
空に浮かぶのは鳥ではなく色とりどりの魚達。たまに海の水が地上へと降り注ぐ、けれど其れは恵みではなく大地を枯らす。
地上は夜空。
足元は幾多もの星が輝き照らす。けれどもあまりに眩しいから私たちは眠ることを知らない。いつまでも醒めることのない現実を見続けるのだ。
「いい加減に現実を見ろ」
薄い半透膜の向こう側から聞こえる声はよく知っていて、知らない声だ。彼の声は嫌いではない、むしろ安心する。でも、私はまだここから出たくないの。
「――は―んだ」
遠ざかる声に少しほっとする。