***



「うわあああああああああああん!!!!!」

「ゆ…遊戯ッ…!」

「あらあら、この子ったら…」

「ほっほ」



ほっほじゃねえよクソジジイイイイイイイイ!!!



色々と衝撃的な世界旅行を終え、漸く日本に帰ってきた僕たち。
ああ、これで漸く愛しの遊戯に会える…!とるんるん気分で我が家に飛び込んだその瞬間、僕の声を聞きつけた遊戯にタックルされ、何が何だか分からぬまま大泣きされた。

えっ?何、どういうことなの?遊戯?なに、何で泣いてんの!?



「ゆ、遊戯、どうしたの…?」

「うわあああああああああああああああああああん!!!!!」



遊戯ィィィィィィィィィィ!!うわあああんじゃわかんねえよおおおおおお!!!
とにかく必死に頭を撫でて泣き止ませようと試みてみるけれど、そうすると遊戯はさらに僕にしがみついて泣きじゃくる。ええええええ僕どうすればいいのおおおおお!!!?
帰ったら遊戯のエンジェルスマイルに癒されようと思ってただけにダメージも衝撃も半端ないです!!なんなの遊戯!どうしたの遊戯!?僕も凄く混乱中だよ!!!



「ま…ママ!ヘルプ!ヘルプミー!!」

「あら、ちょっとアメリカに行ったからかしら。英語を覚えたのね、これでいつでもアメリカに住めるわね、遊理」

「やだああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

「余計泣いたああああああ!!!?遊戯っ!ねえ遊戯どうしたの!?」

「ほら遊戯、ちゃんと言わなくちゃ遊理わかんないわよ」

「遊理…っ…遊理がああああああああああああ!!!」

「僕が何いいいいいいい!!!?」

「遊理っ…あめりかいっちゃやだあああああああああああああああああああああっっ!!!!」



…………アメリカ?

え、いや、確かに行ってきたけど……それが、何?え?行っちゃやだって、もう行って来て帰ってきましたけど?え?



「…遊戯?」

「ひぐっ、えぐっ…遊理、いなくなっちゃやだぁ…!!!」



………きゅん。

はっ!いやいやきゅんとしてるときじゃないぞ今は!!頑張れ僕!理性よ耐えろ!



「ボクっ、かえってきたら遊理いなくて…っ!ママにきいたら、じーちゃんとアメリカ行っちゃったって…帰ってこないって…!!」

「…………ママ…」

「あら、私ちゃんと言ったわよ?『しばらく』帰ってこないって」



いや、まだちびっちゃい遊戯にそこんとこの判別つくわけないでしょ。
つまりあれだ、遊戯は自分が知らない間に僕がアメリカに行っちゃって帰ってこなくて、それで僕がずっとアメリカに行って帰ってこなくなると、そう解釈して泣いてたのか。

何それ可愛い。



「遊理ーっ……うえええええ……」

「ゆーぎ?僕、もうアメリカ行かないよ?てか、帰ってきたんだよ?」

「かえって、きた…?」

「うん。もうおうちにいるよ」

「…ほん、と?もう、いなくならない?」

「うん、遊戯と一緒にいるよ」

「…ほんと?」

「ほんとほんと。僕が遊戯に嘘ついたことある?」

「な、い」

「でしょ?」

「ワシには日ごろから嘘つきまくっとるが…」



じじいはだまっとれ。あとそこは日頃の行いだっちゅーの。



「寂しかったんだね、ごめんね遊戯」

「ううう…遊理〜っ!」

「おーよしよし。(不可抗力だけど)黙っていなくなってごめんね、ただいま遊戯ー」

「おか、えりぃ…」



漸く泣き止んだ遊戯は、まだ涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔だったけど、漸く笑顔を見せてくれた。
ママから聞いた話だと、ここ数日間、遊戯はずっと泣くか落ち込むかしていたらしい。あーもう、何でこんな可愛いのこの子は。どこまで僕のポイントついてくんのかなぁこの子は。

ママは何も言っていかなかった遊理が悪いのよなんて笑っていたけど、いやいやちょっと待ってよお母様。元はといえば強制的に連れてったじーちゃんが原因でしょうよ。そりゃあ理不尽ってもんですぜ。
まあそんな訴えは、もちろんじーちゃんの無理やりな話題変換により黙殺されましたが。この狸爺…!

遊戯にいたっては、ここ数日離れていた反動なのか、帰ってきてからずっと僕にべったりだ。まあ僕としてもそこまで困るようなことはないため、寂しい思いをさせたお詫びもかねて遊戯の好きなようにさせている。
今も、夕飯が出来るまで、おもちゃが散らばる子供部屋で、遊戯の千年パズルを組み立てる手伝いをしている。



「むむむ…しかしこれ、実際やってみると本当わけわかんないね。えっ、コレほんとにはまるの?」

「でしょー?全然進まないんだって…あ、はまった!」

「えっ、マジで?遊戯すげえ!」

「えへへ…遊理が帰ってきたからかな、何か調子いいぜ!」

「(きゅんっ) 遊戯可愛い!もう大好きー!」

「わわっ!…へへ、ボクも大好きだぜ、遊理!」



がば、と遊戯に抱きつけば、遊戯は照れくさそうに笑いながらも抱きしめ返してくれる。あーもう可愛い。マジ僕の天使!ここ数日離れてた分の反動があるってのは、案外僕も同じなのかもしれないなぁ。
そんな遊戯の首には、僕の首から下がっているものと同じアンクが輝いている。
それに寄り添うスカラベの色は、突き抜けるような空色――――ターコイズだ。



「…うん?あれ?」

「んん?どした?」

「遊理、あれなぁに?あんなの部屋にあったっけ?」



そう言って遊戯が指差す先にあるのは、一枚の円盤。
千年パズルが詰められていた黄金櫃の隣に、そっと安置された――――黄金の、円盤。



「………………あぁ」



人の顔くらいもある大きな円盤。
中心部は丸い鏡面があり、その周囲をぐるりと囲むように黄金の装飾が施されている。

窓から差し込む太陽の光を浴びて、キラキラと美しく輝く二つの黄金。その鏡のすぐ傍に、小さな袋が置かれていた。遊戯に渡したものと同じ―――あの店の、小袋が。
僕は遊戯に抱きついたまま、それを見つめたそっと目を細めた。








「 ……秘密 」









――――――――鏡面の真上に位置する装飾の中心で、黄金櫃に刻まれたものと同じウジャト眼が怪しく輝いた。











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