まあ勿論サレンダーなんてさせてもらえるわけもなく。
とうとう決勝戦の瞬間は訪れた。やっべえおうち帰りたい。今猛烈に遊戯に会いたい。遊戯のエンジェルスマイルに癒されたい。ゆーぎーゆーぎーゆーぎぃぃー…



「両者、前へ!」



そんな僕の現実逃避もむなしく、審判の声が高らかに響く。
ちくしょう、こうなったら仕方ねぇや。女は度胸!ここまできたら腹ァ括るぜ!!

海馬瀬人が、無言で僕にデッキを差し出す。うわあその道端に落ちてる小石を見るような目で見るのやめていただけます?まぁつまり、僕には何の興味も抱いていないということらしい。
僕も自分のデッキを海馬瀬人に差し出し、互いにシャッフルして相手に返した。

コイントスで先攻後攻を決め、位置につく。



「それではこれより、デュエルモンスターズアメリカ大会・ジュニアカップ決勝戦を開始する!!」



僕と海馬瀬人が視線を合わせる。…お手柔らかに?



「「 デュエル!! 」」



海馬【LP2000】

遊理【LP2000】



先攻は、僕だ。
「僕のターン、ドロー。僕はモンスター一体を守備表示で召喚。その後カードを三枚伏せてターンエンド」

「ボクのターン。『ガーゴイル』を攻撃表示で召喚」



ガーゴイル
ATK 1000
DEF 500



「その守備モンスターに攻撃」




海馬が淡々と攻撃宣言を行う。
僕はぺらりと伏せカードをひっくり返した。



「残念、僕が伏せたカードは『ホーリーエルフ』!」



ホーリーエルフ
ATK 800
DEF 2000



「ってことで、君には1000ポイントのダメージを受けてもらうよ」

「ちっ…」



海馬【LP2000→1000】



いきなり半分のライフポイントを削れてしまった。
ちらりと海馬瀬人を見ると、うわあ…。凄い目でこちらを睨んでいる。
なんつーか、忌々しいってこういう目のことを言うんだろうか。怖っ。



「…カードを1枚伏せ、ターンエンド」

「僕のターン。…僕は手札からデュナミス・ヴァルキリアを攻撃表示で召喚!」



デュナミス・ヴァルキリア
ATK 1800
DEF 1050



「ホーリー・エルフの表示形式を変更して、バトル!デュナミス・ヴァルキリアでガーゴイルを攻撃!」

「罠発動。『聖なるバリア‐ミラーフォース‐』!」



あっ。



「フフ…これで、キミのモンスターを全て破壊する」

「…ちぇっ。ごめんね、デュナミス、エルフ」



召喚したばかりのデュナミス・ヴァルキリアとホーリー・エルフを墓地へ置く。
手札にはこれ以上出せるカードはない。
僕はターンエンドを宣言した。



「ボクのターン…ドロー。……フフ、コレで決めさせてもらうよ」

「…!」

「ボクは手札から『ミノタウロス』のカードを召喚する!」



ミノタウロス
ATK 1700
DEF 1000



場に既に召喚されているガーゴイルとあわせて、総攻撃力は2700。
プレイヤーへの直接攻撃が許可されているこの大会で、その脅威の攻撃力は相手のライフを一気に削り取ることも可能だ。
当然、目の前の彼もそれを狙っているのだろう。ニヤリ、と悪役さながらの笑みを浮かべた。



「これで終わりだ!モンスター二体でプレイヤーへダイレクトアタック!」



ふ、と僕は笑みを浮かべた。



「僕の場に伏せカードがあるの、わすれてないかい?カウンター罠発動!『和睦の使者』!」

「なんだと…!?」

「これで君の攻撃をこのターン無効にする!」



ニヤリ、とニヒルな笑みを浮かべて僕は攻撃をかわす。
海馬瀬人は小さく舌打ちをしてガーゴイルを守備表示にすると、ターンを終了した。



「フン、次のターンで確実に仕留めてやるさ」

「残念だけど、君のターンはこれで終わりだよ」

「…何?」



ピッとカードをドローして手札を確認した僕が告げたその言葉に、彼は眉を寄せた。



「僕は手札から魔法カード『強欲な壷』を発動!デッキからカードを二枚ドローする」



新たに追加された二枚のカード。…これで、準備は整った。



「『マハー・ヴァイロ』召喚!」



マハー・ヴァイロ
ATK 1550
DEF 1400



「マハー・ヴァイロ…?」

「このカードには特殊能力があってね。君レベルのデュエリストなら知ってるんじゃないかな?」

「…! まさか!」

「そのまさかさ!僕は場の伏せカードより装備魔法『一角獣のホーン』を発動!」



マハーヴァイロ
ATK 1550→2250
DEF 1400→2100



「一角獣のホーンは装備したモンスターの攻撃・守備力を700ポイントアップさせる装備カード。普通ならここで力の上昇は終了するけれど…マハー・ヴァイロは自身に装備された装備カード一枚につき、攻撃力を500ポイントアップする効果モンスターだ!よって彼の攻撃力は…」

「…2750!!」

「正解!ヴァイロ、ミノタウロスを攻撃!」



ホーンを装備したヴァイロの攻撃で、ミノタウロスが撃破される。
海馬瀬人の場にはもう一体ガーゴイルが残ってはいるけれど―――



「貫通ダメージで君のライフはゼロ!僕の勝ちだね」

「なっ…そんな馬鹿な…ッ!!!!このボクが!!!?」



海馬【LP1000→0】



驚愕に大きく目を見開いた海馬瀬人の手から、残った手札がバラバラと落ちる。
僕は手札をデッキに戻し、呆然としている海馬瀬人に笑顔を向ける。



「楽しかったぜ。ありがとう、瀬人」

「勝者!ユーリ・ムトウ!!!」




わあっ!と会場が今日一番の大きな歓声に包まれた。







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