結局じーちゃんには勝てなかった。くっそお手札事故め…。
約束どおり僕のおやつのケーキをじーちゃんに半分謙譲した後、僕はデッキの調整に取り掛かった。
今まで集めたいろんなカードを組み合わせ、バランスやコンボも考えつつデッキを組みなおす。
「遊理、何やってんの?」
「あれ、遊戯。おかえりー」
カードとにらめっこを始めて数十分。外に遊びに行っていた遊戯が帰ってきた。
部屋に入って来た遊戯は、とてとてと僕の傍まで歩いてくると、背中からぐでーっと雪崩れかかってくる。うぐっ…可愛いけど、重い!
「あ、カードだ」
「うん、デッキの調整してんの」
「ふーん、それ最近じーちゃんとやってるやつ?」
「うん、そうだよ」
「じーちゃんに勝てた?」
「………………」
僕は聞こえないフリをしてカードに向き直った。
遊戯が「遊理ー?」と顔を覗き込んでくるけど知らんぷり。…大人気ないって?知ってるよ!
「あー、遊理もしかしてまた負けたんだ!」
「ぐさっ!ううう…なんでじーちゃんに勝てないんだよお…」
「やっぱ負けたんだ?」
「………遊戯ぃ!」
「わわっ」
思わずがばちょっと遊戯に抱きつく。遊戯は最初驚いていたけど、しょうがないなあと苦笑して僕の頭を撫でた。……あれっ、おかしいな。一応僕精神的には遊戯より年上なはずなんだけど。あれ?僕精神退化してない?あれっ?
「よしよし、大丈夫だよー遊理。遊理頑張ってるから、きっとじーちゃんにも勝てるようになるよ」
「………遊戯」
「ねっ?」
僕の頭を撫でながら、遊戯はにこっと笑った。
ばきゅーん!!
遊理の ライフに 2000のダメージ!
「…僕もう一生ブラコンでいい」
「? ぶらこん?なぁにそれぇ」
「んとねぇ、つまり僕は遊戯が大好きってコト」
「! ボクも遊理のこと大好きだよ!!」
ばきゅーん!!!
もうやめて!とっくに僕のライフはゼロよ!!
ぐりぐりと額を遊戯の薄い胸に押し付ければ、遊戯は楽しそうに笑って僕を抱きしめてきた。もうお前マジ天使。遊戯マジ僕の天使。
もう精神が退化してるとかそんなことどうでもいい。全然どうでもいい。なんか遊戯とじゃれてると大抵のことがどうでも良くなってくるよねぇ。不思議不思議。
…8年後には、この天使な遊戯に王様の魂がくっついてくるわけですか…そして遊戯がたくましく成長するわけですか……それもそれで楽しみだけど、なんか惜しい気がするな←
「(天使が戯れとる……)」
「………お父さん、何やってんの?」
そんな風にきゃっきゃとハートや星を飛ばし合い戯れる僕らを、扉の隙間からこっそりビデオカメラ片手に覗いていたじーちゃんと、怪しいものを見るような目でそれを見ていたママがいたことを、僕たちは知らない。