ファラオ。
まぁいわゆるエジプトの王様のことを指し示す呼称ですよね、そのくらい私にだってわかってます。
でもさ。
何でそのファラオが私の目の前にいるのかは、いくら考えてもわかりません誰か説明してくださいいやマジで!!!!
「目が覚めたようだな」
「はぁ…お陰様、で?」
首をかしげながらそう言うと、目の前の青年は透き通るような紅の瞳を細めた。
傍らには、何やら厳しい顔つきの男が二人。あのトトという少女は、いない。
「そう固くなるな。目覚めたばかりなのだ、体も辛かろう」
「はぁ……」
「女!王の御前であるぞ、何だその態度は!」
「良い、シモン。彼女も混乱しているのだろう。あまり怯えさせることはするな」
「しかし…」
納得がいかない、と言いたげに顔をしかめるその男。どうやら側近のようなものらしい。
王と呼ばれた青年は、穏やかな笑みを浮かべてこちらを見た。
「無事でよかった。砂漠で生き倒れているそなたを見つけたときは、肝が冷えたぞ。そんな軽装で砂漠を越えようとするからだ」
「砂漠…?」
「この都の東に広がる砂漠だ。…覚えがないのか?」
その言葉に、どういうことだと私は眉間に皺を寄せた。
「私…今まで、学校にいて……」
「がっこう?…何だそれは?」
「え?……生徒達が集まって、勉強するところ………?」
「勉強?そなた、女人でありながら勉学を学ぶのか?」
驚愕したような青年たちの様子に、ますます顔をしかめてしまう。
女が勉学を学ぶ必要はないというのは、大昔の考え方だ。
それに、目の前の彼等の容姿…言葉……。
沸々と、嫌な予感が頭を過る。
「………ねぇ……ここは、日本じゃないの……?」
「にほん…?聞いたことのない村の名だな」
「村じゃなくて、国なんだけど」
「国?そなた、やはり異国の民か。肌の色が我らと異なり、透き通るような白であるから、ある程度の予想はしていたが」
あぁ、夢なら覚めろ。
「ここはそなたの生国ではない。ここはエジプト…王たる私が納める、砂の都だ」
タイムスリップとか、どこの創作漫画だよ…!