04


狂ったように笑いながら床から剣を引き抜き、再びこちらに向かって突進してくる少女。
っと…ジュードくんはまだ動けないっぽい、かな!



「ごめんねジュードくん!」

「え――――」



私は手早くジュードくんに謝ると、部屋の隅に向かってジュードくんを思いっきり蹴飛ばした。その反動で、私も反対側に飛ぶ。
一瞬遅れでそこに突っ込んできた少女から視線を外さないまま、私は空中に手をかざした。

膨大なエネルギーが――――うねる。



「唸れ烈風!タービュランス!」



少女へと放たれた風。
それに少女は目を見開き、大きく横に跳ぶことで回避する。



「…へぇ、アンタなかなかやるんだ?」



ニタリ、と少女が私を見て嗤う。

私は術式が消えた手を払い、その目を真っ直ぐに見返す。



「あそこでみっともなく震えてるあの子よりは楽しめそうじゃん…?―――――じゃあ、アンタから先になぶり殺しにしてやるよ!」

「トキワっ!」



ジュードくんが叫ぶ。
私は剣を構えて突進してきた少女の動きを見極め、上に跳んだ。
そして再び、術式を展開する。先ほどの術式は緑。そして今度は――――赤に輝く。

私はその術式に、空中を滑るように滑空して飛び込んだ。



「――――空破ッ爆炎弾!」

「ぐっ…!?」



ぱっと炎に包まれた私の蹴りが、少女へと襲い掛かる。
少女は剣を盾にしてそれをなんとか防いだが、それで終わったと思ってる?



「甘いよ!連撃いきますっ!飛燕連脚!」



続けて繰り出した私の蹴りが、今度こそ少女の腹に入る。
小さく呻き声をあげて、彼女は大きく後退した。



「この程度?」

「…っの、アマぁ!!」

「ほら、来なよ。遊んであげるからさ」



ニッと笑って挑発すると、少女はわかりやすいくらいに激情して私に飛び掛かってきた。
少女の剣が、炎に包まれる。



「(なるほど、この子は炎属性ってことか)」

「燃え尽きなァ!!」

「だが断るっ!」



私は瞬時にマナをかき集める。



「荒れ狂う流れよ、スプラッシュ!」

「んなっ…!?」



突如発生した濁流に、少女が飲み込まれる。
背後でジュードくんが息を呑む気配がした。



「くっ…調子に、乗りやがって…!」



ぎら、とずぶ濡れの少女の目がこちらを睨み付ける。
これは完全に恨みを買ったな。そろそろケリつけるか。そう考えて私は拳を構えた―――その時だった。



――――シュン



私達が入ってきた扉が、突然左右に開いた。
そして入ってきたのは、先ほど研究所の外で出会ったあの女性。
女性は室内のこの惨劇を見ても表情を変えず、静かな口調で呟く。



「ここかと思って来てみたが…どうやら違ったか」

「…何?アンタも侵入者?」



ばしゃ、と少女が立ち上がる。
水を吸って重たくなった髪を鬱陶しげに払い、少女は隠そうともせずに舌打ちした。



「次から次へと、厄介だな……まぁ、いいや。全員皆殺しにしちゃえば、問題ないでしょ」



ゆらぁ、と少女が剣を構える。
それを見て、女性が少女に向かって口を開いた。



「おとなしくしてくれれば、危害は加えない」

「大人しくぅ?はんっ!ふざけてんじゃねーよ!!!まずはそのきれいな顔、憂さ晴らしにぐちゃぐちゃにしてやるよ!!」

「逃げて!」



ジュードくんが女性に向かって叫ぶ。
少女は標的を私から女性に変更し、剣を振りかぶって彼女に向かって猛然と突進する。

そんな少女に、女性は仕方ないというように首を振ると、少女に向かって右手を払った。
その手に急速にマナが集まるのを感じ、私はハッとして右手を前に突き出す。



「燃え尽きなァ!!」

「――――――イフリート」



少女が剣を女性めがけ突き立てようとした、次の瞬間。

室内に、炎が広がった。



「ぎゃあああああっ!」

「ッ!」



真っ正面からそれを受けた少女の体が、ぱっと燃え上がる。
私は防壁を展開し、後ろにいたジュードも庇って炎を防ぐ。
たまらず剣を取り落とし、両腕で胸を掻き抱く少女の悲鳴に眉を寄せる。

そんな少女に、女性は冷静な顔つきのまま左腕を横に持ち上げた。右手が発する炎とは別のマナがその手に集まり、生じた強烈な風が少女の体を吹き飛ばす。

どん、と背中から勢いよく壁に叩きつけられた少女は、力なく床にくずおれた。…どうやら、気を失ったらしかった。



「す、すごい……」



後ろでジュードくんが呆然と呟く。
彼女が腕を下ろし、風と火が静まったのを見届けて、私も防壁を消した。






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