∴ 01 うーん…と誰もいないエレベーター前で大きく伸びをする。あ、背骨がパキパキ言った。私まだすげぇ若いのに! どうも、先日入隊して二週間あまりで初陣をこなしてきました、暁チトセです。あの後、まだ次の任務は入ってません。 と言うことで、ここ数日はあの任務の時に感じた個人的に違和感があった所を修整する訓練をして日々を過ごしている。…何て言うかさぁ、まだ神機の切り換えがうまくいかないんだよね。感覚とか、スピードとかが主に。 其処のところは、時々リッカちゃんに助言を求めながら改善中。あの子凄いね、神機のことになると途端にイキイキするよね。うん、輝く女の子は素敵です。 地道に訓練とかをしていると、たまにタツミちゃんが飴玉くれます。子供扱いされてる感は否めないけど、貰えるもんは貰っとく精神でありがたく戴いてます。 今のご時世、糖分は貴重だし。 「チトセ」 「あい?」 さて、今日はどこまでやろうかな。そんなことを考えていると、急に後ろから声をかけられた。 聞くだけで自然と背筋が伸びる凛々しい声。振り向かずとも誰かわかる。 彼女は踵を鳴らしながら、私の隣へと歩いてきた。 「おはよう、チトセ。今日も早いな」 「つばききょーかん!」 あ、相変わらず豊満なお胸…じゃなくて、凛とした美貌ですね! ツバキ教官は私を見下ろすと、その鋭い眼差しをほんのわずかにだが緩めた。 「先日はご苦労だった。リンドウから報告は受けている。…よく頑張ったな」 うわ、ツバキ教官からお褒めの一言を!珍しいっていうか嬉しい! えへへ、とはにかむように笑うと、ツバキ教官も小さく微笑んだ。うん、美女の笑顔マジ世界の宝。地球が生んだ偉大なる財産だよね! 「初陣はどうだった?」 「えっと…りんどーしゃ…リーダーがいてくれたから、あんまり怖くありませんでした」 「そうか。リンドウからは、とても冷静に物事に対処できたと聞いているぞ」 俺が出る幕なんてなかったともな、とツバキ教官は続ける。 いやいや、そんなことないですよ。あれで結構内心ガクブルでしたから。この幼女、あんまそういうの態度とか表情に出ないみたいだけど、結構怖かったんですよオウガテイル。 「…だが忘れるな。戦場では小さな油断が命取りだ。お前のような子供ですら、奴等は容赦なく喰らいに来る。いや、お前だからこそ、喰らいに来る」 「でしょーね」 その言葉に私は当たり前だと頷いた。 野生の世界でもなんでも、狩るのはまず弱い者から。肉食獣が獲物である草食動物を狙うときも、まずは体が小さく経験も浅い子供から狙うものだ。 成熟したた大人を狙えば、得られる肉も多いがその分負うリスクも高い。 ハイリスク・ハイリターン。 ローリスク・ローリターン。 まずどちらを狙うかと問われれば当然、より狩れる確率が高いローリスクの方だ。 あれだよ、よくわかんない人はヴァジュラとオウガテイル同時討伐任務で、先にどっち狩るかって話に置き換えれば分かりやすいんじゃないかな。…………いや、あれは人によるか。手際がよくてちゃっちゃか任務終わらせたい人はヴァジュラから狩るか。私はウロチョロされると目障りだから、弱いオウガテイルから先に狩る派なんだけど。 「わかっているなら良い。くれぐれも気を抜くなよ」 「あい」 しゅぴっ、と私はツバキ教官に向けて、了解の意を示す敬礼をした。 ×
|