∴ 02 出撃ゲートを潜り、神機保管庫エリアで神機を受け取る。 そこで神機の整備をしていたリッカちゃんからも、「行ってらっしゃい」と言われて。「いってきます」って返したら、頭を撫でられた。 「どこまでいく、ですか?」 「ん?『贖罪の街』だ」 って言ってもわかんねーか?と笑うリンドウさんと一緒にヘリコプターへと乗り込んだ。 贖罪の街、か。かつての大都市跡。“私”が生きていた場所の…時代の面影を、色濃く残すフィールド。 やがて、目的地へと到着する。 リンドウさんに助けてもらいながらヘリコプターを降り、私達はポイントへ向かった。 ――――贖罪の街…。 その昔、多くの人で賑わったであろう都市の面影は、今はもうアラガミ達によって無惨に捕食された“食べ残し”しか残っていない。 見上げると目眩がするほど高いビルには、食い破られたような大穴が空いている。そこを吹き抜ける風が、まるで何かの生き物の鳴き声のように不気味な音を奏でていた。 「…ここも随分、荒れちまったな」 寂れた街を見回し、ぽつり、と呟くリンドウさん。その声と横顔はどこか寂しそうに見えたが、次に私を振り向いた時、彼の顔にそんな感傷は欠片も見当たらなかった。 自分の感情を隠すのがうまい人だ、と思う。 「さて、じゃあ実地演習を始めるぞ」 赤黒く光る神機――――ブラッドサージを軽々と肩に担ぎ、廃墟となった街の一角の高台に立ったリンドウさんが私を振り返る。 すっ、と彼が私の前に拳をつきだした。 「俺からの命令は三つだ」 すっ、と人差し指が立つ。 「死ぬな」 もう一本、立てて見せる。 「死にそうになったら逃げろ。そんで隠れろ」 さらに、もう一本。 「運が良ければ不意をついてぶっ殺せ」 その言葉に、私は思わず吹き出した。 「…なんだ?」 何故、私がいきなり笑ったのか。訝しげな顔をしたリンドウさんに、私は親指だけを折り曲げた右手を、リンドウさんに見せた。 「それで、四つめです」 「…おっと」 こいつは失礼、とリンドウさんが肩を竦めた。 「ま、とにかく生き延びろ。それさえ守れば万事どうにでもなる」 「はい」 わかってますよ、と私も頷く。 「ぼくだって、死ぬ気はありませんから」 刃形態にした神機の柄を握り、私はにこりと笑った。ザァ、と乾いた風が私達を撫でる。サイドテールにした藤色の長い髪が、波打つように靡いた。 |