ロリーダーがゆく! | ナノ



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噂には、聞いていた。
若冠10歳の幼い少女が、この極東支部に『ゴッドイーター』として配属されたと。

しかも、『新型』。

『新型』とは、新型神機使いの略称。フェンリル本部によって近年開発された、近接攻撃型である刃形態と、遠距離攻撃型である銃形態の二つの機能を即座に切り替えて使用できる神機。
ソーマ達のような『旧型』神機の、それぞれの特性を併せ持った神機のことを指す。
その性質ゆえ、適合条件が旧型神機よりも厳しく、まだ世界でも数少ない稀少な存在だ。


その『新型』の適合者が、この極東支部に配属された。
それだけでも注目を浴びる条件としては十分だというのに、その『新型』を見た者達によって流された情報は、さらにそれを煽ることになる。



―――待ちに待った待望の『新型』は、僅か10歳の幼い少女だった…と。



その話を聞いた時、誰もが耳を疑った。そんなまさか、と。
ソーマとて、そんな噂話など宛てにしていなかった。かくいうソーマだって、ゴッドイーターとして極東支部に配属されたのは11歳の時。初陣は12歳の時だった。

…いや、実際には「どうでもいい」と言った方が正しいか。大人だろうが子供だろうが、実力がなければ遅かれ早かれ死ぬ。ここはそういう世界だ。
だが確かに、その噂が事実なのだとしたら。配属された『新型』が、ただ適合しただけの―――“生まれた時から”そう宿命付けられ、そう教え込まれ育てられたソーマとは違い、まだ何も知らないような、ごく普通の少女なのだとしたら――――



「(呪うなら、自分の運命とこのクソッタレな世界を呪え)」



まぁ何にせよ、ソーマは極力その新人と関わるつもりはない。
生きようが死のうが、ガキだろうが大人だろうが、関係はない。興味も、ない。
それは何もその『新型』だけに限った話ではない。
ソーマにとって、自分以外の人間はただそこに“存在する”程度の認識だった。自分は自分、他人は他人。区切りをはっきりさせることで、彼は他者との関わりを、極力避けてきた。
周囲に関して無関心で、寡黙で、冷徹。そんなソーマに自分から接してくる人間など、同じ第一部隊の同僚や、あの超がつくほどバカでお気楽な赤髪の男くらいしかいなかった。



「すみませーん!ここ、座ってもいいですか!」



関係ない、関わらない。
そのつもりでいたソーマと、件の『新型』が接触したのは、そんな朝のことだった。