∴ 02 デカトウモロコシまじパねえ。 品種改良の末、通常のトウモロコシより数十倍巨大化された、通称デカトウモロコシをお皿に乗せて、私は食堂内をふらふらしていた。 すれ違う人たちは、幼い私を見ると皆が皆驚いたような顔をして、ひそひそと何事かを囁きあっている。 ゴッドイーターになってから上がった聴力でこっそり聞き分けてみると、「何で子供がこんなところに」とか、「あれが噂の新型…?」など、まあ予想内の言葉ばかり。 やっぱり10歳の幼女で極東支部初の新型とか、注目されちゃうよねぇ。 ま、いいか。どうせこんなのも一時だ。これだけ噂が立っているなら、もう少し時間が経てば勝手に消滅していくだろう。内容が内容だし。私ご覧のとおり目立ってるし。噂が事実として広まっていくのも、そう遅くはないだろう。 「(それより、席探さなくちゃ……っと)」 しかし、本当に人多いな。 見渡す限り、どの席も埋まっている。…参ったなぁ。どうしよう。 そのとき、ふと食堂の隅のほうに、いくつか空いている席を見つけた。 やった、ラッキー!意気揚々とそちらに向かおうと足を踏み出した途端、 ――――ざわっ! 何故か周囲がざわめいた。 えっ、何何? 「おい、あの子あそこ行く気かよ…!」 「新型の子だろ?知らないんじゃないのか?」 「誰か止めてやれよ!」 ……ホントに何なんだ? 訝しげに思いながらも、私はすたすたとその空席に向かって歩いていく。 ―――すると、突然。 あれだけ込み合っていた人混みが、消えた。 「…えっ」 いや、消えたんじゃない。一気に減ったんだ。これだけ混み合ってるのに、なんで…。 そう思って顔を上げ、目に映ったものに、私は一瞬驚きで動きを止めた。 そして、理解した。 …そういうことか、と。 にしてもこりゃ、ちょっとあからさますぎやしませんかねぇ? 「すみませーん!」 しかし、私は気にしない。 にっこりと笑顔を浮かべ、私は空席に向かっていく。そして、向かいの席に座る“その人”に、声をかけた。 「ここ、座っていいですか!」 ざわ、とさらにざわめきが大きくなる。 しかし知ったこっちゃねえ。にこにこ、にこにこ。 そんな私をちらりと一瞥し――――彼は、ソーマ・シックザールは目を閉じた。 |