∴ 02 そう言われて可愛いこの子の視線を独り占めするのは、勿論私ではなくコウタ。まぁ、ですよねー。私ゴッドイーターに見えませんもんねーですよねー。 「えっ、あ、はい、そうっすけど…」 突然見知らぬ女の子に話し掛けられたからか、しどろもどろになるコウタ。 女の子は顔を赤くしたままこちらに近付いてくると、「えっとっ…」と口を開いた。 「わ、私、台場カノンっていいます!その、新人さんをサカキ博士のラボまで案内するようにツバキさんから言われててっ!」 「あ、そうなんすか!いやぁ、助かった!実は場所わかんなくって!な、チトセ!」 案内。その言葉を聞いて、コウタの顔が分かりやすいほど緩んだ。 うん、そのメディカルチェックに遅れたりなんかしたら、ツバキ教官からキツい一撃食らいそうだもんねとぼそりと言うと、コウタの笑顔が一瞬固まった。あ、聞こえてた?結構声量しぼったはずなんだけど。ゴッドイーターの聴力すげぇ。 その時、ふと台場カノンちゃんの視線が私に向いた。 私を見た瞬間、彼女はまあるい目をさらに丸くさせる。 …あれっ?あの、なんか心なしか、そのキレーな目が、輝いているような気が………? 「わぁ…!かっ、可愛いー!」 びくっ! 黄色い声を上げてバッと目の前にしゃがみこんできたカノンちゃん。動き早ッ!てか速ッ!! 「あの、あのっ!妹さんですか?」 「え?あぁ、いや、こいつは…」 「可愛いですねぇ。あれっ?でもあんまり貴方と似てないような…」 「こいつは妹じゃなくて」 「あれ?そういえば、何で一般の方がこんなところまで…?エントランスまでなら一般の方にも解放してますけど、こんな奥までは親族でもなかなか来れないのに」 「や、だから…」 「あ、もしかして迷子ですかこの子?間違って入ってきちゃったの?」 「…………………」 話 を 聞 け ! コウタが!主にコウタが困ってる! 私についての説明をしようとすると、尽く会話を遮るカノンちゃんにコウタも困り顔。 くっ…仕方ない、ここは私が直々に! 「ぼく、いもーとちがう、です」 「えっ?」 「ぼく、『しんがた』。しんがたの、ゴッドイーター」 ぐい、と右腕にはめられた大きな赤い腕輪を、目の前に突き出すようにしてカノンちゃんに見せる。 それを見たカノンちゃんは丸い目をさらに大きく丸くして、「え?え?」と困惑していた。 「ゴッド…イーター…?」 「うん」 「あ、あなたが?」 「うん、『しんがた』だよ」 頷くと、カノンちゃんが小さく「嘘…」と呟いた。 しかしこの反応、挨拶してきた人全員に言われてきた為、もう慣れたものである。やっぱり驚くよなぁ、と苦笑するコウタに「ねー」と同意して、私は特にそれ以上深く言うこともなく、こてんと首をかしげてカノンちゃんを見た。 「ぼく、『しんがた』の暁チトセ。かのんちゃん、はかせの『ラボ』って、どこにあるですか?」 「え、あ…こ、ここの通路を…進んだ、突き当たりに」 「ありがと、です!」 にぱっ!と最高級の営業スマイルでお礼を言う。今まで呆然としていたカノンちゃんは、その笑顔を合図にしたように、一気に顔を赤く染め上げた。 ふはは、可愛いだろこの笑顔!自覚してる!! 何やら壁にガンガンと額をしきりにぶつけているコウタはスルーして、私は壁にかかった時計を見た。えーと、一五〇〇………あ、そろそろかな。 「こーた、ぼくそろそろちぇっく行ってくる」 「そ、そっか。わかった。じゃあ、そこまで一緒に行こっか」 「うん、いーよ!じゃーねかのんちゃん、またね!」 どうでもいいがコウタくん、その額から流れる血はなんとかなりませんか?軽くホラーです。 |