ュガーソーダ・シュガーグレープ



「黒ちん黒ちん」

間延びした話し方をする紫色の彼を見上げればぼとぼとと頭から大量の飴が落ちてきた

「わ、どうしたんですか?こんなに…」

「この前ゲーセンでとったーいっぱいあるから黒ちんにもおすそ分けだよー」

にこにこ。
今日の紫原くんは機嫌がいいらしい(まぁお菓子はよくくれるんですけどね)

「ありがとうございます、紫原くん。今日の部活終わりに食べますね」

「今食べないの?美味しいのにー」

そう言って僕の手に乗る飴を2つ取って、食べよう?と誘う。

「あの、今から午後の授業始まるんですよ?分かってますか?」

「始まるまであと3分あるよー」

「大きさが大きさなんで舐め終わりません」

眉を寄せて断ったのだが、紫原くんはただ呆然と僕を見つめるだけだ。

「どうしました?紫原くん、」

「黒ちん、さっきのもう一回」

「?どうしました?むら、」

「そっちじゃない方。一個まえ」

早く、と急かす紫原くんを不思議に思いながらもう一度話す。

「大きさが大きさなんで舐め終わりません、ですか?」

「うん。…なんかえろい」

「イグナイトしますよ紫原くん」

「ごめーん怒んないで、飴あげるから」

はい、と先ほど取った飴を僕の口の中に入れる。
舌の上で甘いような酸っぱいような味が広がった。

「んむ、ぶどうですか?」

「そー美味しい?」

「それは、まぁ美味しいですけど…(市販品ですし)」

僕の言葉に満足したのか、また笑顔になった紫原くんは僕の手をいきなり取って引っ張った

「サボろ、黒ちん」

「は、ちょっと紫原くん何を言ってるんですか!?サボりに僕を巻き込まないでください!」

「もー飴食べちゃったじゃん。いーでしょ?」

今さらはっとなる。
口の中の飴を出そうにも…というか出す気にもなれず肩を落とした。

「まったく…とんだ策士ですね、君は」

「黒ちん行こう、屋上行こ。お菓子食べてお昼寝しよ」

ぐいぐいと僕を引っ張る大きな子ども(全く、厄介な人に捕まってしまいましたね…)



ガチャという音と共に明るい日差しが目に痛く感じた。

にこやかな紫原くんは僕を後ろから抱き締める形で座った

「おれも食べよー」

「あ、ソーダ味ですか」

「うん正解ー。おれね、飴ん中で一番ソーダ好き」

「これはまたマニアックですね。なんでですか?」

首を動かして後ろの人に問いかければ、さも当たり前のように、黒ちんみたいだから。と答えた

「…は?」

「似てるよ、ソーダの飴と黒ちん。甘くてちょっとだけしゅわーってしてる感じとか」

「君、僕を食べたことないでしょう」

なにを言ってるんですか、と続けようとしたら紫原くんの顔が目と鼻の先で。

「いつもね、おいしそーって思ってたんだよー目とか本物より甘いんだろうなぁとか、髪は柔らかいけどしゅわしゅわするんだろうなーとか」

ぎゅ、抱きしめてくる手に力が入った。

「紫原くん、僕は美味しくないですよ。甘くもないししゅわしゅわもしません」

「えーおいしそーなのに」

やっぱり目が一番、呟いたと思ったら僕の目尻に柔らかい感覚が伝わった。

「っ…!?む、紫原くっ…」
「うん、やっぱりあまい」

ぺろ、と目元を舐める紫原くんを認識すると僕の身体はまったく動かなくなった。
その間にも髪を噛んだり、首元に口を寄せたりと紫原くんの動きは止まらない。

「ちょ、やめてください!くすぐった…紫原くん!」

「怒んないでよ黒ちんーせっかくスキンシップしてたのにー」

「これのどこが!?ただのセクハラですよ!!」

腕から逃れようとじたばたしていると、さらに抱き込まれて身動きがとれなくなった。

「黒ちんあまいにおいするー」

「っ、だからあの…もういいです、降参します。」

「やった、勝ったー」

「勝ったというかずっと君が勝手にいろいろしてたんでしょう…」

はぁため息をついて紫原くんにもたれかかった。
体格差がかなりあるため余裕でくつろげる。

「黒ちん、黒ちん」

「なんですか、紫原くん。」

「好き、大好き。離れてかないで、そばにいて。」

「…どんな冗談ですか」

「冗談じゃないーほんとに好き。ずっと黒ちんと一緒にいたい。ね、黒ちんは?おれのこと好き?嫌い?」

ぎゅうぎゅうと甘えるように抱きしめてくる紫原くんはほんとに子どもみたいで、だけど言ってることは本気みたいで。(もう分かりません…)


「そうですね。僕は飴の中で一番ぶどうが好きですよ」

「?どーゆーこと?」

「そういうことです、察してください」

頬に熱が集まっていくのは気のせいだ、きっと気のせいだ。

「…分かった。黒ちんすき、すき。大好き」

「わ、分かりましたから…!」



耳を撫でる風の音。
遠くに聞こえる始業のチャイム。
口に広がるソーダとぶどう。



シュガーソーダ・シュガーグレープ
(それは、君とのキスの証拠)



2013.03.06.
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