刻印


「痛くねーか?」
「はい、大丈夫です」


ゆっくりと背中を洗いながらテツヤが傷付かないよう細心の注意をはらう。


「それにしても…相変わらず白いな〜」
「肌ですか?」
「そ。女でもここまで白いやついねーし」
「そうでしょうか…僕はあまり外に出てないので仕方ないかと」


そう言って苦笑いに近い笑顔を見せるテツヤ。
テツヤは生まれてから一度も神社を出たことがない。
言わば、箱庭の子ども。
真実はまた違うけど

(命命がいるから仕方ねーか…)

ちら、とテツヤの右足を見る。足首から太股まで、茨のような刻印。
命命の印
これは時が経つほど成長し、宿主を蝕んでいく。
宿主が死ねば何処かへと消え、新たな肉体を求めさ迷う。

(何が神だ、ただの呪いだろ)

「和兄さま?…印がどうかしましたか?」

余程顔に出ていたのかテツヤが見上げてくる

「…何でもねーよ。そろそろ飯出来たろうし上がるか!」
「はい、そうですね」


スッと手を差し出すとテツヤも普通に握ってくれる。
小さい手。

己のすべてを、与える手。