守人


走りにくいであろう長い着物で器用に駆けていくテツヤを見送ると緑間に視線を移す。


「で?今日何人戻した、何人創った。」


多分今の俺の目を見たらテツヤは驚くだろう。
でも緑間は見慣れている。

「戻した人数が八、創った人数が五」
「…対価は」
「取ってない。」
「はぁ!?阿保か、止めろよ!」


緑間の着物の襟元を締めるように持つと眈々とした声で返事が返ってくる。


「過去に何度も、もう何百回も止めてるのだよ。でもあいつは絶対に対価を取らない。自分を殺す方法しか知らない…そう、教えられてきた」
「自己犠牲ってか?ふざけてんじゃねぇよ。クソったれ」
「…なんで分かったのだよ、戻したことが。」
「……ざっと2.5、いや8か。テツヤの今日だけで痩せた体重。いくら食わしても減る一方だな」
「触っただけでそれか。気持ち悪いな。」
「さらっと気持ち悪いとか言うなよ!傷付くだろ!」
「事実なのだよ」
「がっ…はぁ…仕方ねーだろ、そうやって体の管理してやんなきゃ、命命を保てない。テツヤを守れない。」


ずっと掴んでいた襟を離してひらひらと手をふる。


「テツヤ自身を守ることが仕事だろ。今日も飯にサプリ入れんの忘れんなよー緑間」
「…分かっているのだよ。湯あみは頼んだぞ」
「おうよ。じゃ、守人らしく頑張りますか。」


俺は風呂場に、緑間は台所に足を向けてそれぞれの仕事を始める。



すべては可愛い“義弟”のため。
生まれた時から残酷な運命を背負い、それでも笑顔でそれを受け止め、自己犠牲を基礎代謝のように行う彼を守ること。

それが、俺、高尾和成と緑間真太郎。

通称、“命命”の“守人”