セントポーリア、はじめまして。 なんとか時間に間に合って接客をしていると叔母さんが珍しく店に出てきた。 「叔母さん。どうかした?」 「ちょっと見にきた〜。って和也、どうしたのそんな嬉しそうな顔して」 「は?」 「いつもの3倍笑顔よ。なに、いいことあった?」 「別に…なにも?」 いいこと。 そう聞かれて思い浮かんだのは、今日の小林との出来事だった。 俺の手首を握った細い手が意外と大きかったな、とか助けてくれたとき肩が上下しててずっと探してくれてたんだな、とかケンカしたと思ったらすぐ仲直りできて嬉しかった、とか…まるで女みたいなこと考えてた。 「なぁに、わたしに嘘つく気?そんな弛んだ頬してなにもなかったとは言わせないわよ!」 そう言う叔母さんに頬っぺたつねられていてて、と抗議の声をあげる。 「全く、まるで恋した少女みたいな顔しちゃって!やっぱりいいことあったんでしょう?」 「ここここ恋っ!?」 「あら図星?」 「んなわけあるかっ!!」 「顔赤いわよ〜まったく可愛いわねぇ!」 「可愛くねーよっ!」 *** 店の手伝いを終えてベッドの中で今日言われたことを思い出した。 「好き、ねぇ…」 ふと思い出すと、好きって感情がちゃんとあった覚えがない。 だからよく分からないのかもしれない。 「って…!」 ばふっと毛布を頭から被る。 まてまておかしい、好きって感情がよく分からないにしても今日の流れでいったら俺は、小林が好きってことになるわけで… それはない、って考えても頭の中は小林のことでいっぱいだった。 *** 「ねみぃ…」 ずっと恋だとか小林のことを考えてたら眠れなくて、結局寝付けたのはいつも起きる時間の2時間前だった。 だるい身体を引きずるようにチャリで学校に向かった。 *** チャリをクラスの自転車小屋に置き、欠伸をしながら教室へ向かっていると、トンと後ろから肩を叩かれた。 「おはよう、相原。でかい欠伸だね」 「…!は、はよ小林!でかい言うなっ」 「はいはい。なに、寝れなかったの?珍しいね」 「うるさいな!俺だっていろいろあるんだよ…」 自分でも分かるぐらい声が小さくなった。 小林は俺の隣に来ると「俺なら話聞くから」と言って俺の頭に手をおいて友和にやるみたく、くしゃりと撫でてきた。 撫でられたとき、ふわ、と心が軽くなって暖かくなった。 そして、一気に顔に熱が集まり心臓が跳ねる。 「相原?」 「っ子ども扱いすんなっばーか!」 べしっと小林の頭を叩いて廊下を走って教室に向かった。 高鳴る胸と、熱の集まる頬と、やっと分かった不思議な気持ち。 「(俺、小林のこと…好きなんだ…)」 セントポーリア、はじめまして。 (はじめて芽生えた、“小さな愛”) 2013/05/09... |