セントポーリア、はじめまして。 小林と、屋上で出会って、一緒に昼飯食って、どーでもいいこと話して… 同じ時間を共有して―・・・ ただ、ただそれだけで幸せだった。 この、感情に気付くまでは。 「小林ー、数学のノート貸してくれ」 D組の教室に入って小林に 声をかける。 小林は相変わらず感情の読めない顔をあげて俺と向き合うと、あぁまた。と呟いて数学のノートを出した。 俺はそれと同時にサイフをポケットから取り出す。 「十円だっけ?」 「百円だって。いい加減覚えなよ」 「ワリ、ほい」 呆れた表情を見せる目に少し笑って、細めな手に百円を乗せた。 「どうも。…石のことならちゃんと覚えてるのにね。興味の問題?」 「うるせー…っとにかくっさんきゅーな!!」 「うん。ちゃんと返してよ。」 「わぁってるー!」 返事をして教室を出ようとしたら 「廊下は走らない。」 「教師かテメーはっ!!」 振り返って見た小林は、珍しく笑った“目”をしていた。(めずらし…) *** E組の教室、自分の教室に戻ると鷹司が寄ってきて 俺の手に握られた小林のノートを見ると口を開く。 「相原君、また小林君からノート借りたの?ノートぐらいなら僕のを見せるって言ってるのに。」 そういえば前もこんなこと言われたなぁ、とか頭の片隅で考えながらパラパラとノートを捲る。 相変わらず男とは思えない綺麗なノートだ。 感激すらする。数式の意味はよくわかんねーけど。 「聞いてるのかい、相原君」 「あー聞いてる聞いてる。でも小林ので十分だから、気にしないでいーって」 「そうかい?君、本当に小林君が好きだね」 「…はぁっ!?」 意外に声がでかかったようでクラスの奴らがこちらに視線を向けてくる。 慌てて鷹司を廊下へ引っ張り出した。 「おっま…!お前なぁ!!」 「急にどうしたんだい、相原君。痛いじゃないか」 そう言いながら俺が引っ張った襟元を直す。 「お前さ〜…変なこと言うなよ…」 「変なこと?僕なにか変なこと言ったかい?」 「どう考えても言っただろ!!」 「僕からしたら変なこと言ってないんだけど…僕なんて言ったかな?」 「だっ…かーらー!お前がさっき、その…俺が、小林のこと、す…」 「す?」 察しろよ!!と叫びたくなった。 お前頭いいだろうが!! 相変わらずきょとんとした顔でこちらを見るので後戻り出来ない感が漂っていた。 たかが好きって言うだけじゃねーか!いける、俺なら言える。つーか何回も言ってきてるし… 「その、さ。お前言ったじゃん?俺が、小林のこと…すき…だって」 すき、の部分だけすっげー声小さくなった… 女々しいな俺…! 「あ、言ったね、君、本当に小林君が好きだねって。でもなんで言うの躊躇ったんだい?小林君、好きじゃないの?」 「いやそうじゃねーけど!なんつーか、男同士で好きとかおかしいし」 「そうかなぁ…あれ、相原君顔赤いよ?大丈夫?」 そう指摘されて慌てて頬を触ると熱あるんじゃねーのってぐらい熱かった。 なんか不甲斐なくて教室に戻ると机に突っ伏した。 「相原君?風邪でもひいたの?」 鷹司、心配してくれるのはありがたいが今はほっといてくれないだろうか。 そんなことを口にすることは出来ずただ、気にすんな大丈夫。と顔を伏せたまま答えた。 きっとまだ俺の顔は赤いだろうから。 ------------- |