世界は狭いです
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ぽかぽかと暖かい今日は天気もよく、空には雲一つない。
真っ青な空を見ると、少しだけ自分中の不安が消えた。
中途半端な時期の転校
不安になる理由としては十分だろう。
学期的には学年の始まりである4月なのだが…
今日から俺は中学三年生だ。
中三なんて受験でピリピリしてるだろうし、最後の思い出づくりの年だ。
転入生が直ぐに仲良くなる確率なんて、低い気がする……
まぁ、元々親の転勤が多くて転校はしょっちゅうだったから、今までいた学校にも特別仲の良い友達はいなかったけど。
「ここか…」
目の前の校舎を見る。
登校時間まではまだ時間があるから生徒の数は少ない。
俺は裏門から校舎に入り、職員室へと向かった。
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「それじゃあ、私が呼んだら入ってきてね?」
そう言って微笑んだのは担任の美月先生。
美月先生は若くて綺麗で生徒に人気らしい。
俺が頷くと、先生は教室の中に入っていく。
教室から先生や生徒の声が聞こえる。
…なんか緊張してきた。
数回深呼吸をすると、タイミングよく美月先生が俺のことを呼んだ。
扉を開け、教室へと入る。
美月先生の隣に立ち、黒板に自分の名前を書いた。
「鍠海璃音です。最近、京都に引っ越してきたばかりなので色々と教えてください。よろしくお願いします。」
そう言って、頭を下げる。
「わぁ…可愛い子やん!」
「女子にも見えるけど男子だよな?学ランやし。」
…うん。いい感じじゃね?
長過ぎず短過ぎず、いい感じの長さだと思う。
最後の方に聞こえたのは聞かなかった事にしよう…。
「ふふ。それじゃあ、鍠海君の席は…あそこね?」
美月先生の指差す方を見る。
…やった!窓側の一番後ろじゃん!
心の中でガッツポーズ!…って、アレ?
指差された席の隣を見ると見覚えのある顔。
あの人…この間助けてもらった…
取り敢えず席に座ると、向こうから声をかけられる。
「もしかして…君、この間の子?」
「えっ…あ、はい。」
「偶然やなぁ〜。俺、志摩廉造。よろしゅう。」
スッ…と差し出された手。
「あ…よろしく。」
突然の事に戸惑いながらも、俺はその手を握った。