昼休み、俺はさっさと昼飯を平らげてみょーじを探していた。
今日の朝練の時、真ちゃんから映画の試写会のチケットを貰ったのだ。
なんでも、真ちゃんのお母さんが懸賞で当たったらしいのだが都合がつかなくなってしまったらしい。
それで真ちゃんがチケットを貰ったのだが、タイミング悪く真ちゃんもその日は都合が悪いらしく俺に渡してきたのだ。
ちょうどその日は部活もオフだし、ラッキーなことにこの映画はみょーじが見たいと言っていた映画だった。

「見つかんねー…。」

ぐるぐると校舎内を回るけどみょーじの姿は見つからない。
諦めて教室に戻ろうとした時、どこかから猫の声が聞こえた。
いつもなら何も気にせずにいくのだか、何気なく声の聞こえた校舎裏の方に行ってみると、そこにはみょーじの姿。
みょーじの視線の先には木の上で鳴き声をあげる猫。
もしかしてこれって…。

「みょーじ、何してんの?」
「高尾君!」

声をかければ俺の姿を見たみょーじは不安そうな顔。
どうやら、俺の予想は的中したようだ。

「あの猫、木から降りれないみたいなの。助けるにも手が届かなくて…。」
「なるほどね。じゃ、俺に任せろよ!」

みょーじにそう言って改めて猫を見る。
確かに割りと高い所にいるが、あれなら登れない高さじゃない。
俺は近くにあった枝に手をかけると、猫を驚かさないように木に登る。
近くまできて猫に手を伸ばす。

「大丈夫、怖くないからこっちこい。」

なるべく優しい声をかけながら猫を怖がらせないように、ゆっくり…ゆっくり……
伸ばした手が猫の腕に触れる。
猫が逃げるよりも先に俺はその腕を引き、猫を抱えた時だった。

「高尾君!!!」

ずるり、っていう嫌な音と体が傾く感覚。
とっさに俺は猫を腕の中にしっかりと抱く。
どさって音ともに俺は木から落ちた。
音の割には体は痛くない。
なんとか上手く受身がとれたようだ。

「高尾君!大丈夫!?」
「ん、へーきへーき。」

顔を真っ青にして駆け寄ってきたみょーじに、心配かけないように笑顔を向ける。
腕の中の猫は木から落ちたせいか少し震えてるように見えたけど、すぐにするりと俺の腕から抜けて何処かに走って行った。

「ふぅ、一件落着ってとこか。」

へらりと笑って隣に立つみょーじの顔を見上げれば申し訳なさそうな顔。

「ごめんなさい!高尾君はバスケ部なのに無理させて。怪我なんてしちゃったら…」

今にも泣きそうな顔で謝られる。
そんな顔は見たくなくて俺はゆっくりと立ち上がる。

「だいじょーぶだって。これは俺がやりたくてやったんだし、怪我だってしてないし?仮に怪我したとしてもそれは俺のミスであってお前のせいじゃない。」

いつも通りの笑顔で何とも無いように言う。
それでも納得のいかなさそうなみょーじの前に、俺は試写会のチケットを見せた。

「これなーんだ?」

突然のことにぽかん、としていたみょーじの顔は、みるみるうちに驚きに変わる。

「こ、これって…!!」
「この映画、みょーじ行きたいって言ってたじゃん?部活の奴からチケット貰ったんだけど2枚あってさ。よかったらみょーじ、一緒に行かね?」

俺の言葉にみょーじはゆっくりと俺を見る。

「…いいの?」

遠慮がちにそう問われる。
言い方こそ遠慮がちだが、表情は行きたいという感情を隠しきれてなくって……
正直、めちゃくちゃ可愛い!

「もちろん!てか、これ渡そうと思ってみょーじのこと探してたんだよな〜。」
「そ、それはそれはお手数をおかけして…」
「ぶふっ!なんで敬語…!!」

少し噛みながらいきなり敬語になったみょーじに思わず笑いがこぼれる。

「ちょ、笑わないでよ!ちょっと気が動転しただけで…!!」
「わりぃ、わりぃ…っく…」
「高尾君!!」

ヤバい、なんか笑いが止まんない。
まぁ、恥ずかしそうに怒るみょーじも可愛いしいっかな。



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