最終下校時間ぎりぎりの、暗い校舎を一人で歩く。
唯一灯りのついてる教室に入れば、愛しい彼女の姿。

「…寝てんのか。」

机に突っ伏して眠る彼女に思わず笑みが溢れる。
近くにあった椅子を持ってきて、彼女の座る机の側に座る。
さらさらと頭を撫でたり髪をいじってたら、ん…と小さな声がして体が動く。

「…かず、なり…くん…?」
「ん、おはよ。なまえ。」

名前を呼んでそのまま頭を撫でる。
しばらくして意識が覚醒したのか、俺の手を優しくどけて少し申し訳なさそうに笑った。

「ごめんね、もしかして起きるまで結構待ってた?」
「いいや、さっききたばっかり。」

俺の言葉に短く返事をして、なまえは鞄の中から綺麗にラッピングされた包みを差し出す。

「和成君、誕生日おめでとう。」

そう言って微笑む姿に、一年前のなまえの笑顔が重なる。
中々プレゼントを受け取らない俺を疑問に思ったのか、不思議そうな声で名前を呼ばれる。

「…あれから一年か。」
「え?」
「去年の誕生日だよ。あの日から一年経つんだなぁって。」
「あぁ、そっか。もう一年経つんだ。」

懐かしそうに目を細めたなまえが愛しくて、俺はなまえの手からプレゼントを取って机の上に乗せてから、ぎゅっと小さな体を抱きしめる。
突然のことにびっくりしたのかなまえの体が小さく動く。

「なまえ、好き。大好き。」
「…ど、どうしたの…いきなり……」

顔を赤くさせてあわあわしてるなまえ。
そういうところも可愛くてたまらない。
産まれてきて良かったなって思った。
好きな人に誕生日を、自分が産まれてきたことを祝福されるのが、こんなに嬉しいことだなんて思ってなかった。
たまらなくなってなまえの唇に自分のそれを重ねる。
離れて顔を見れば真っ赤な顔でふにゃりと微笑む。

「和成君、誕生日おめでとう。産まれてきてくれてありがとう。」

本日二度目の祝福に更に幸せで胸がいっぱいになって、俺は再びなまえの唇に口づけた。


end.



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