「っ…みょーじ…どこに、いんだよっ…」
真ちゃんと屋上で話した後、俺はみょーじを探していた。
昼休みが終わるまで10分ちょっとしかない。
1秒でも早くこの気持ちを伝えたかった。
「……いた…。」
視界の先に見覚えのある後ろ姿が目に入って走るスピードを上げる。
「みょーじ!」
振り返ったみょーじに数秒で追い付く。
いくらバスケ部レギュラーといっても、全速力で走れば多少は疲れる。
息を整えていたら戸惑ったような顔のみょーじと目が合った。
「みょーじ、話したいことがあるんだけど今大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫だよ。」
みょーじが頷いたのを確認して、ここじゃあれだから…と屋上の方へ向かった。
* * * *
「高尾君、話って何?」
屋上には誰もいなくて、俺とみょーじの二人きり。
ちらり、と時間を確認すると予令まではあと10分。
もしかしたら間に合わないかもしれないけど、ここで引き返す気はなかった。
「…まず、昨日はごめん。途中で帰って。」
「え?でもそれは、急用ができたんだから謝ることじゃ…」
「それ、嘘なんだ。」
みょーじは一瞬きょとんとした後、俺の言葉の意味を理解したのか悲しそうに顔を歪めた。
なんで…って小さく呟くのが聞こえる。
俺は一回深呼吸してから、みょーじの顔を真っ直ぐ見た。
「嫉妬したんだ。」
「え?」
「昨日、伊月さんがみょーじと楽しそうに話してんのに嫉妬した。」
「え…あの、たか、」
「みょーじと伊月さんが付き合ってるんじゃないかって思って、嫉妬して、頭の中ぐしゃぐしゃになって、そんで嘘ついて帰った。自分勝手だよな。本当にごめん…。」
謝るために下げた頭を上げると、みょーじの顔は真っ赤になっていた。
混乱してるのかぱくぱくと口が動いて、時々声にならない声を溢す。
そんな様子に俺は一回深呼吸してから、名前を呼んだ。
真っ赤なみょーじの顔がこっちに向けられる。
「俺は、みょーじのことが好きだ。」
ふ、と息を吐いて言葉を続ける。
「あの日…俺の誕生日に教室で会った日から、俺はみょーじのことが好きだ。」
数秒遅れてみょーじの真っ赤だった顔が、更に真っ赤になる。
「え、ちょ、た、たか…たかおくっ…な、なに…いっ…て…」
「ちょっと一回落ち着け!!?」
あまりの動揺っぷりこっちがびっくりする。
数回深呼吸を繰り返してやっと落ち着いた。
「…あのね、高尾君。」
そう言って顔を上げたみょーじの頬はまだ少し赤い。
「あの日、高尾君にあげたお菓子あるよね?」
「え?あ、あぁ…。」
突然、お菓子の話をされて戸惑う。
てか、俺の告白に関しては何もなし?
「作りすぎて余ったからあげるって言ったの…あれ、嘘なの。本当は、最初から高尾君にあげようと思って作ったやつなんだ。」
みょーじの一言に俺の思考が止まる。
俺にあげようと思って作った?誕生日に?
さっきの動揺と真っ赤な顔が頭に浮かぶ。
ぱちり、ぱちり、とジグソーパズルのピースがはまるような感覚。
「私は、ずっと前から高尾君のことが好きです。」
この日のみょーじの笑顔を、俺はきっと一生忘れないだろう。
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