みょーじが好きだ、と気付いてから一週間くらいが経った。
アイツとの関係に特に変わったことはない。
学校で挨拶を交わしたり、面白いもん見っけたらメールしたり。
少しずつ仲良くなってきてるとは思う。
「でも、やっぱりもうちょっと距離縮めてーなぁ…。」
誰もいない学校に俺の独り言が響く。
俺は今教室に忘れ物を取りに向かっていた。
最終下校時間間際の学校には誰もいなくて静かだ。
これ、この間と同じ状況だよな。
またみょーじいねーかなぁ…なんて淡い期待をしながら教室の扉を開けようとして…
「あ…」
「え…」
扉が開いて中から出てきたのはみょーじだった。
「よぉ、みょーじ。こんな時間まで何やってたんだ?」
「あ、えっと、委員会の仕事してたら遅くなっちゃって。」
「そっか。お疲れさん。」
みょーじの委員会って図書委員だったけか。
偶然図書委員が遅くなって、偶然俺が今日忘れ物して。
真ちゃん的に言うなら…運命なのだよ、ってとこだな。
「高尾君はどうしたの?」
「俺はまた忘れ物しちゃって。」
苦笑混じりに言うとみょーじは少し考えた後に思い出したのか、あの時かぁ…なんて言いながら真っ暗だった教室の電気を点けてくれた。
みょーじにお礼を言って自分の机に向かう。
目的の忘れ物を鞄の中にしまい、教室の入り口に立っているみょーじを見る。
「みょーじ、もう暗いし送ってくよ。一緒に帰ろうぜ!」
せっかく会えたんだ。
このチャンスを無駄にしたくない。
みょーじは少し考える素振りを見せた後、申し訳なさそうに眉を下げた。
「そんなの悪いよ。高尾君だって部活で疲れてるでしょう?私は一人でも大丈夫だよ!」
俺の事を気遣かってるのか笑いながら言うみょーじ。
だけどここで、あぁそうですか、って言う俺ではない。
俺はみょーじの側まで近付いて、ぐいっとみょーじの片手を掴む。
「俺が一緒に帰りたいからいいんだよ。それともみょーじは俺と帰んのは嫌?」
「そ、そんなこと…!!」
俺の言葉に顔を真っ赤にして首と手を横に振るみょーじ。
そんなに一生懸命振らなくてもいいのに。
てか、そんな可愛い反応されっと期待しちゃうんだけどな。
にやけそうになる頬をなんとか引き締めて、掴んだままの手を引っ張る。
「そんじゃ行こうぜ!」
「え、え…」
まだ少し戸惑ってるみょーじは気にせずに教室をでる。
しばらく歩けばみょーじも大人しくなった。
少し強引過ぎたかな、と思ってみょーじを見れば目が合った。
「ありがとう、高尾君。」
顔をほんのりと赤くしたままはにかみなが言うみょーじは、俺には十分過ぎる程の破壊力で。
赤くなった顔を見られたくなくて俺は前を向いたまま返事の代わりにみょーじの頭を軽く撫でた。
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